「南シナ海」で恩を売る

韓国政府は中国との首脳会談を望んでいたのですか?

鈴置:もちろんです。「THAAD」で入ったヒビを修復するためです。我が国は「南シナ海」問題で米国の要求に逆らい、対中非難に加わらなかった。これを評価してもらえば首脳会談も可能――と期待したようです。

 中央日報が「あす『南シナ海判決』…もう一度試される『米中等距離外交』」(7月11日、日本語版)で、以下のように書いています。文章を整えて引用します。

  • 仲裁裁判所の判決の後の韓国の中立的な立場が、アジア欧州首脳会議での朴槿恵大統領と李克強中国首相の会談実現につながるとも政府は見ている。
  • 会談が実現するか否かが、THAAD配備で悪化した韓中関係が少しでも進展局面に入るかのバロメーターになる。

人民日報がタブーを破った

でも、韓国の期待は「シカト作戦」の前に空振り……。

鈴置:そうこうしているうちに、韓国では「人民日報が朴槿恵大統領を名指しで批判した」と騒ぎになりました。

 朝鮮日報の「『THAAD固守』を明かした翌日…党機関紙が朴大統領を標的に脅す」(8月4日、韓国語版)を翻訳します。

  • 人民日報が3日まで連続4日間、オピニオン欄にTHAAD放棄を要求する社説や寄稿を載せた。ことに8月3日の社説は、朴槿恵大統領を真正面から狙い撃ちした点で、強度がこれまでとは異なった。

 「大統領を狙い撃ちした」という人民日報の社説は「鐘声」というコラム。人民網・日本語版でも読めます。見出しは「中国の安全保障上の利益が損なわれてはならない」(8月3日)です。

韓国のTHAAD配備容認を批判する記事で、韓国の大統領が名指しされるのは当然でしょう?

鈴置:韓国人は「我々の大統領は習近平主席と極めて親しい。そんなことはあり得ない」と、なぜか信じていたのです。前述の朝鮮日報の記事は以下のように続きます。

  • 昨年9月、中国の戦勝70周年の軍事パレードに朴槿恵大統領が出席し習近平主席と天安門の上で並び立って以降、朴大統領への批判は(中国メディアで)一種のタブーだった。だが、そのタブーが破られたのだ。

次ページ 日本は化外の民