「怖い」から従う

でも「中国は嫌い」と言う韓国人もいます。

鈴置:確かに中国嫌いの韓国人が多い。今回の「報復するぞ」との威嚇で、韓国の嫌中感情はますます高まるでしょう。でも、嫌い――正確に言えば「怖い」から中国に従うしかない、と韓国人は考えるものなのです。

「我々は中国に怯んでいない」と言ってくる韓国人もいます。

鈴置:韓国人はそう思いたいのです。どう公平に見ても「南シナ海」では対中批判に加わらず事実上、中国支持に回りました。が、韓国紙は「中立だ」と書くのです。「中国に怯んだ」ことを認めたくないのです。

 韓国政府も奇妙な言い訳を用意しました。「南シナ海で米国を支持できないのは日本のせい」です。

 外交部が記者クラブを相手にレクチャーしたようで、各紙が一斉に「日本のせいだ」と書きました。ハンギョレの「韓国政府、『南シナ海判決』 16時間後に短く曖昧な声明」(7月13日、日本語版)から関連部分を引用します。

「弱腰」は日本のせいだ

  • 政府のこうした慎重で曖昧な反応には、米中軋轢の間でバランスを取るだけでなく、今回の裁判結果が日本の独島挑発を刺激しかねないという憂慮も作用したものと見られる。
  • 「竹島(独島)を韓国が不法に占拠している」と主張してきた日本政府が、独島問題を仲裁裁判所に提訴する可能性を排除できないためだ。

 今回の仲裁裁判所の判決を明確に支持しないのは「日本が韓国を『竹島』で訴え勝訴した際、受け入れなければならなくなるから」との説明です。

 でも、韓国は「竹島」と「南シナ海」は無関係、と言い張る手があります。国際紛争ではダブルスタンダードが当たり前。ことに韓国は、それを恥ずかしいと思う国ではありません。そもそも日本が裁判に持ち込む可能性は今のところ低い。相当に苦しい言い訳です。

韓国では「なんでも日本が悪い」のですね。

鈴置:ええ、それが常套手段です。こう説明すれば「中国に弱腰」との批判をそらせると外交部は考えたのでしょう。実際、先ほど述べたように、政府に対する「弱腰批判」は表面化していません。

 もっとも、この「『独島裁判』で負けた時に受け入れねばなくならなるから」との説明は自爆攻撃です。韓国は常々「独島は我が国固有の領土」「日本の領有権主張は妄言」と主張しています。

 「裁判が怖いとは、よほど領有に法的自信がないのですね」と突っ込まれてしまいます。実際、韓国の国際法専門家の中には「日本と裁判になったら負ける」と内心、考えている人が結構います。

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