助手席で方向を指示

身も蓋もない例えですね。

鈴置:韓国にはやりようもあったと思います。文在寅大統領には車両運搬車の助手席に座り、運転席に座るトランプ大統領のハンドルさばきに注文を付ける手があった。トランプ大統領がいくら我が強かろうが、忠実な同盟国の意見を完全に無視することはできません。

 でも「民族ファースト」を掲げる文在寅政権は就任早々、米国を裏切った。日米韓のスクラムを壊し、南北対話に走ったのです。これで米国に影響力を行使することは困難になってしまった。

 米軍が韓国に配備したTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)の問題でも米国を激怒させました。THAADの完全な配備は環境影響評価を実施してから、との方針を打ち出したからです。

 そのうえ、左派の団体がTHAAD基地を封鎖し、燃料の搬入など運用を妨げている。しかし警察は見て見ぬふりです(「『THAAD封鎖』でいよいよ米国を怒らせた韓国」参照)。

 文在寅大統領は訪米中に「環境影響評価が配備を覆すためのものであるとの疑念を捨ててほしい」と、いかにも近い将来に配備を認めるかのごとくに語りました。

 ハンギョレの「THAAD配備めぐる米国の疑念は払拭したが・・・中国をどう説得するかが課題に」(7月3日、日本語版)などが発言を報じています。

 が、帰国後も大統領は左派団体のやりたい放題を放置したまま。米国が韓国を信頼するわけがありません。

 それどころか、在韓米軍を撤収する可能性も出てきました。北のミサイルから韓国と在韓米軍を守るために配備した、THAADの運用を韓国が国をあげて邪魔するのですから。

深まる「五面楚歌」

在韓米軍を撤収して米国は北朝鮮への攻撃ができるのですか?

鈴置:在韓米軍基地がなくとも先制攻撃は十分に可能です。米国は地上戦をやるつもりはない。一方、空軍基地は近過ぎて却って使いにくい。

韓国外交は迷走を続けますね。なぜ、こんなことになってしまうのでしょうか。

鈴置:自分に都合のいい世界像を設定し、それをベースに外交を組み立てるからです。朴槿恵政権がそうでした。

 米中双方にとって韓国が必要不可欠な国になったと思い込み、両国を競わせ、操る作戦に出た。両大国の力を背景にすれば日本と北朝鮮を叩ける、とも本気で考えた。

 こんな現実から遊離した妄想外交の結果、周辺国すべてから怒りを買い、孤立しました(「文在寅政権は『五面楚歌』から脱出できるか」参照)。

 一方、左派の文在寅政権は同民族の北朝鮮と手を組めば、周辺大国に対抗できると考えた。彼の信奉する本によれば、米帝国主義に対し世界の人民は立ち上がり、大同団結して戦って勝利する――はずなのです(「『米帝と戦え』と文在寅を焚きつけた習近平」参照)。

 ところが現実には北の同族でさえ、韓国からの共闘の申し出を鼻で笑い飛ばし、逆に利用しようとするだけでした。北朝鮮とすれば当然です。脅威は韓国ではなく、圧倒的な核戦力を持つ米国です。米国との関係改善を図ってこそ生き残れるのです。

 韓国の「五面楚歌」は深まるばかり。歴代政権の妄想外交の果てに韓国は周辺国から軽んじられ、無視される存在になってしまったのです。国の運命がかかる重大な時というのに。

次回に続く)

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孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』『米中抗争の「捨て駒」にされる韓国』 に続く待望のシリーズ第9弾。10月25日発行。