南北共同軍が日本を核で脅す

THAADは「韓国も」守るのではないですか?

鈴置:その質問に対し彼らは「同じ民族の北朝鮮と仲良くすればミサイルは飛んで来ない。これが平和を守る一番いい方法だ。南北を仲違いさせているのは米国だから、THAADだけではなく米国も追い出せばすべてが解決する」と答えるでしょう。それに、THAADもなくせるから中国との関係も一気に改善する……。 

米国を追い出しても、北朝鮮の核問題は解決しません。

鈴置:北朝鮮との関係を正常化することで「南の経済力と北の核」を合わせ持つ、強力な統一国家を作れると信じる人もいます。

 「民族ファースト」です。周辺大国の言いなりになって生きてきた。いつかは民族が1つになって自分の意思を通したい――。これが左派、保守を問わず韓国人の夢なのです。

 ベストセラーになった『ムクゲノ花ガ咲キマシタ』(1994年刊)はそんな夢を描いた近未来小説です。この話の中では、統一には至りませんが「南北共同軍」を組織し、日本を核で脅します。

反米の裏返しの「民族共助」

いくらなんでも「北朝鮮と組むよりは米国と組んだ方がいい」と考える人の方が多いのでは?

鈴置:今現在はそうです。でも、韓国ギャラップの2002年12月の世論調査では、米国を肯定的に見る人が37.2%。それに対し、北朝鮮は47.4%と大きく上回っていました。

 一方、「米国」と「北朝鮮」を否定的に見る人はそれぞれ53.7%と37.9%でした。「米国よりも北朝鮮が好き」だったのです。

 米軍装甲車の事故で韓国の女子中学生2人が死んだ事件の影響です。事件が起きたのは同年6月。米軍の軍事法廷が11月に無罪を言い渡した後、反米感情が高まり、韓国全土でデモが繰り広げられました。

 この勢いに乗って、同年12月の大統領選挙では文在寅大統領の盟友である盧武鉉氏が当選したのです。

そんな時代もあったのですね。

鈴置:今後もあるかもしれません。反米感情をかき立てる何らかの事件が起きるたびに、韓国では「反米」とその裏返しの「民族共助」が叫ばれてきたのです。

 事件が発生しなくても、米国に思うように操られていると韓国人が考えれば、反米感情が盛り上がります。例えば、第2次朝鮮戦争の足音が聞こえてくれば、普通の韓国人も「米国は出て行け」「戦争を起こすな」と言い出すと思います。

 すでに左派の間では「米国は北朝鮮との戦争を始めるつもりで、それに韓国を引き込もうとしている」との見方が広まっています。だからこそTHAAD反対デモが起きるのです。

本家・鳩山は挫折したが

「米国は出て行け」と普通の人も言い出すでしょうか。

鈴置:その証拠が保守系紙の「反米親北」批判です。詳しく説明したように、連日の紙面は親米的な社説であふれています。ただ、保守系紙は「このままでは米国に捨てられる!」と悲鳴をあげはしますが「北朝鮮と戦おう」とは書かない。

 「戦争になってもいいのか」という批判と「同じ民族よりも米国が大事なのか」との非難を恐れているのです。

 保守系紙が覚悟を固めていないぐらいですから、米朝関係が際どくなれば、韓国の世論は米国との同盟を打ち捨てて、中立に傾く可能性が高い。

 今でも「我が国が中立化すればミサイルは日本にだけ飛んでいく。高みの見物だ」と日本人に言ってくる韓国人もいます。

 それに韓国が「米国は出て行け」と言う前に、米国が韓国を見捨てる可能性もあります。それを韓国人が自覚すれば、親米派の「同盟を堅持しよう」との主張は説得力を失います。

 「韓国の鳩山」は「本家の鳩山」とは異なって「反米路線」を貫徹する可能性があります。もちろん、トランプ大統領の出方次第ですが。

次回に続く)

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孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』『米中抗争の「捨て駒」にされる韓国』 に続く待望のシリーズ第9弾。10月25日発行。