無神経な文在寅政権

「韓国史上最悪の大統領になる」わけでもありますね。

鈴置:保守派としては、そうです。もっとも、文在寅大統領はこうした批判に馬耳東風。THAAD以外でも「反米親北」路線に突き進んでいます(「文在寅政権の『反米親北』の動き」参照)。

文在寅政権の「反米親北」の動き
5月10日 文在寅大統領就任
5月中旬 マケイン米上院議員が文大統領に面談を要請。青瓦台は1週間返答せず(韓国各紙の報道による)
5月30日 文大統領、THAAD発射台4基の追加配備に関し真相究明を指示
6月7日 青瓦台、環境影響評価を理由にTHAADの4基の発射台増設先送りを示唆
6月12日 文大統領、訪韓したインファンティーノFIFA会長に「2030年ワールドカップは南北中日で開催したい」
6月15日 文大統領、南北首脳会談記念式典で「挑発を中断すれば無条件で対話する」
6月16日 文正仁・大統領特別補佐官、ワシントンで「核・ミサイルを中断すれば米韓合同軍事演習を縮小できる」
6月20日 文大統領、米CBSに「北朝鮮を対話に引き出す方法には様々の意見がある。トランプ大統領と話し合う」
6月20日 都鍾煥・文化体育観光相、北朝鮮の馬息嶺スキー場に関し「活用方法を探す」と平昌五輪共催の検討を表明
6月24日 文大統領、平昌五輪での南北合同チームの結成を呼び掛け
6月24日 THAAD反対を唱える左派のデモ隊が在韓米国大使館を19分間包囲。裁判所が史上初の許可
6月29日、30日 ワシントンで米韓首脳会談

 米国と日本が北朝鮮に完全な核放棄を求め、経済に加え軍事的な圧力までかけている時に「核とミサイル実験の凍結だけで対話する」と宣言してしまった。

 さらには大統領の特別補佐官――大統領と似た名前ですが、文正仁(ムン・ジョンイン)氏が米国まで行って「米韓合同軍事演習の縮小」に言及。大統領もそれを事実上、支持しました(「『米韓合同軍事演習』を北に差し出した韓国」参照)。

 1年間半も北朝鮮に拘束されたあげく、6月13日にようやく釈放された米国の大学生が帰国後6日で死亡。米国の世論が激高している時に、韓国の大統領は2018年の平昌五輪の南北共同開催を呼びかけた……。

史上初の米国大使館包囲デモ

無神経ですね。

鈴置:ここまで来ると、無神経というよりもわざと――米国の反韓ムードを盛り上げる目的でやっているとしか思えません。6月24日にはソウルの米国大使館を取り囲むデモが敢行されました。政府の認可したデモとしては史上初です。

 主催者発表によると3000人が「THAAD反対」を訴えて米大使館の周囲を巡るコースを行進。「人間の鎖」で包囲した、と誇ったのです。

 ウィーン条約により各国政府は外国公館の安寧を守る義務があります。が、裁判所は「韓国の法律では大使館の機能と安寧が守られれば可能」として左派のデモを認めたのです。

 日本大使館はともかく、米国大使館に対し歴代の韓国政府はデモを認めませんでした。今回、裁判所が国内法を理由に許可したのも、反米政権の顔色を見てのことと韓国では見なされています。

ワシントンは馬鹿ではない

保守系紙の悲鳴は……。

鈴置:高まるばかりです。各紙のワシントン特派員は現地の反韓ムードを丹念に伝えています。例えば、東亜日報は米国の識者の「ワシントンは馬鹿ではない」との声を紹介しました。

 「米国は文在寅政権を金大中、盧武鉉(ノ・ムヒョン)政権の太陽政策の継承者と考えている」(6月21日、韓国語版)はクローニン(Patrick Cronin)CNAS所長にインタビューした記事です。

 「太陽政策」とは1998年から2代、10年に渡って続いた左派政権が実施した親北政策のことです。両政権は南北首脳会談を開いてもらう代わりに、北朝鮮に多額の援助を送りました。

 韓国の保守派や日本、米国の多くの専門家はそのカネで北朝鮮が核武装した、と極めて否定的に韓国の左派政権を見ています。

 クローニン所長も文在寅政権が太陽政策を再開すると警戒しているのです。しかも、北朝鮮に核を放棄させようと米国が死に物狂いになっている時に。

「ワシントンは馬鹿ではない」とは?

鈴置:先ほど言及した、大統領の特別補佐官が米韓合同軍事演習の縮小をワシントンで唱えた事件(「『米韓合同演習』を北に差し出した韓国」参照)。

 青瓦台(大統領府)は「個人としての発言」「特別補佐官には言動を注意した」と弁解しました。が、クローニン所長は「嘘つけ」と言い放ちました。以下です。

  • 特別補佐官の発言は文在寅大統領が選挙当時から言っていたこととほぼ同じだ。問題は外交安保政策を助言すべき人が政権をとった後にワシントンで、それも米韓首脳会談の直前に語ったことだ。憂慮が深まるばかりだ。
  • ワシントンの人間は馬鹿ではない。特別補佐官はセミナーで米国の専門家と議論を交わした後、韓国大使館の関係者を陪席させたうえ「私の発言を書き取ったか」といちいち指示していた。自分の発言と反応を、外交部を通じ大統領に伝えようとしていたのだ。