騙されても仕方ない

・時代の変化とトレンドをしっかりと読まない、守旧的で冷戦的な(我が)党の姿は、今回の選挙で国民の決定的な判断材料となったようだ。

・南北関係の改善は必ず行われなければならない。また朝鮮半島の真の核のない平和のためには、無条件の制裁と圧迫では核問題の解決は容易ではない。

・対話と妥協により、特に韓米間の協調により、国際社会が北朝鮮を自由民主主義陣営に引っ張り出したこと自体がまさしく変化だ。この変化を私たち自身も受け入れ、積極的に下支えする必要があると見ている。

・4月27日の南北首脳会談と6月12日の米朝首脳会談を通じ、国際社会に第一歩を踏み出した金正恩委員長の姿勢と態度に再びだまされるとしても、いったんは私たちが変わらなければならないと考えるようになった。

 保守の大敗には3つの原因があります。まず、就任以来、一貫して70%前後の高い支持率を誇る文在寅政権に圧倒されたこと。次に、朴槿恵(パク・クネ)大統領の弾劾の際に分裂したままだったこと。3つ目が「南北の和解ムード」に抗せなくなったことです。

 日本や米国と同様に、韓国にも「北朝鮮が本当に核を捨てるのか」と疑う空気はあります。でも韓国には「表面的にでも北朝鮮が軟化すれば戦争の危険性が減る」との思いが根強い。「北朝鮮との和解」を印象付けた米朝首脳会談が、そんな希望的観測を盛り上げました。

 「平和が来る」と韓国人が願う――思いこもうとしている時に「偽装平和ショー」などと冷や水をかければ「不吉なことを言うな」と忌み嫌われてしまう。

米国に見捨てられた

しかし、「米朝」も「南北」も和解はムードに過ぎないのでは?

鈴置:韓国では「ムード」が物事を決めます。「ファクト」ではないのです。金聖泰院内代表が言う「時代の変化とトレンド」とはまさに「ムード」を指します。それを読めなかったから負けたのだ、と保守党は反省したのです。

 結局、ムードに乗り遅れるな。非核化は二の次だ、ということになってしまうのです。金聖泰院内代表も保守系紙と同様に「北朝鮮に非核化の意志などない」と依然、考えているでしょう。

 でも「和解ムード」が蔓延した以上は「金正恩委員長の姿勢と態度に再びだまされるとしても、私たちが変わらなければならない」と言わざるを得ないのです。

でも、この和解ムードが本物かは分からない。

鈴置:その通りです。ただ、米朝関係がよくなろうと悪くなろうと、韓国が米国に見捨てられたことに変わりはありません。米国は非核化のために米韓同盟まで取引材料に差し出したのです。ここに注目すべきです。

 米国を後ろ盾にしていた韓国の保守は、急速に力を失って行く可能性が高い。韓国人にとって、米国を引き込む力のない親米派は無用の長物です。中国や北朝鮮との関係を悪化させる危険な存在とも映ります。親米保守の生き残る空間はなくなるのです。

生煮えで終わった「米朝」

「非核化」はどうなるのでしょうか。

鈴置:現段階では何とも言えません。米朝首脳会談は「生煮え」で終わりました(「から騒ぎに終わった米朝首脳会談」参照)。

 非核化に向けた確かな合意は一切、なされていません。ニューシャム大佐が言うように即断すべきではないでしょう。

北朝鮮が具体的な行動を起こさないまま、ずるずると時間だけがたつのでは?

鈴置:その可能性もあります。反対に、北朝鮮が時間稼ぎすれば面子を潰されたトランプ大統領が怒り出して軍事的解決に走る、との見方も浮上しています。

 米政界を深読みすることで定評のある、朝鮮日報の姜仁仙(カン・インソン)ワシントン支局長がそうした方向で書き始めました。「北朝鮮が早く動かないとトランプが心を変えるかも」(6月22日、韓国語)です。

・韓米合同軍事演習の一時中断というプレゼントを貰った北朝鮮が、非核化のためにいつ、何をするのかにワシントンの専門家の視線が集中している。

・北朝鮮が今、いじくるカードは米兵の遺骨返還とミサイルのエンジンテスト場の廃棄ぐらいだ。非核化の本質とは関係ないものだ。首脳会談の後に続くはずの協議の開催も固まっていない。

・首脳会談後、北朝鮮の反応が芳しくないため、ワシントンの忍耐心が徐々に限界に達し始めた。

・ある北朝鮮専門家は「トランプは自身の名誉と自尊心を傷つけられたと考えたら、急激に方向を変える。先の首脳会談取り消しの時のように、予想外の反応を見せるかもしれない」と語った。

●非核化の約束を5度も破った北朝鮮
▼1度目=韓国との約束▼
・1991年12月31日南北非核化共同宣言に合意。南北朝鮮は核兵器の製造・保有・使用の禁止,核燃料再処理施設・ウラン濃縮施設の非保有、非核化を検証するための相互査察を約束
→・1993年3月12日北朝鮮、核不拡散条約(NPT)からの脱退を宣言
▼2度目=米国との約束▼
・1994年10月21日米朝枠組み合意。北朝鮮は原子炉の稼働と新設を中断し、NPTに残留すると約束。見返りは年間50万トンの重油供給と、軽水炉型原子炉2基の供与
→・2002年10月4日ウラニウム濃縮疑惑を追及した米国に対し、北朝鮮は「我々には核開発の資格がある」と発言
→・2003年1月10日NPTからの脱退を再度宣言
▼3度目=6カ国協議での約束▼
・2005年9月19日6カ国協議が初の共同声明。北朝鮮は非核化、NPTと国際原子力機関(IAEA)の保証措置への早期復帰を約束。見返りは米国が朝鮮半島に核を持たず、北朝鮮を攻撃しないとの確認
→・2006年10月9日北朝鮮、1回目の核実験実施
▼4度目=6カ国協議での約束▼
・2007年2月13日6カ国協議、共同声明採択。北朝鮮は60日以内に核施設の停止・封印を実施しIAEAの査察を受け入れたうえ、施設を無力化すると約束。見返りは重油の供給や、米国や日本の国交正常化協議開始
・2008年6月26日米国、北朝鮮のテロ支援国家の指定解除を決定
・2008年6月27日北朝鮮、寧辺の原子炉の冷却塔を爆破
→・2009年4月14日北朝鮮、核兵器開発の再開と6カ国協議からの離脱を宣言
→・2009年5月25日北朝鮮、2回目の核実験
▼5度目=米国との約束▼
・2012年2月29日米朝が核凍結で合意。北朝鮮は核とICBMの実験、ウラン濃縮の一時停止、IAEAの査察受け入れを約束。見返りは米国による食糧援助
→・2012年4月13日北朝鮮、人工衛星打ち上げと称し長距離弾道弾を試射
→・2013年2月12日北朝鮮、3回目の核実験

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