韓国政府筋が「米韓合同軍事演習の縮小」に言及する中、米国は戦略爆撃機「B-1B」を韓国に派遣。文在寅政権への怒りを示したと韓国では見られている(写真:YONHAP NEWS/アフロ 2016年9月撮影)

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 米韓の対立は深まるばかりだ。同盟がいつまで持つのか分からない。

「挑発中断なら無条件で対話」

前回は文在寅(ムン・ジェイン)大統領がトランプ(Donald Trump)大統領の怒りに油を注いだという話で終わりました。

鈴置:在韓米軍に配備されたTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)を韓国は「封鎖」しています。当然、米国は怒り心頭に発しました。

 それに加え、文在寅大統領は6月15日にソウル市内で開かれた南北首脳会談の開催17周年を記念する式典で演説し、北朝鮮に次のように呼び掛けたのです。

  • 北が核とミサイルの追加挑発を中断すれば、北と条件なく対話に臨めることを明確にする。
  • 膝を突き合わせ、どのように従来の南北合意を履行するか協議する意思がある。核の完全な放棄や朝鮮半島平和体制の構築、朝米関係の正常化まで包括的に議論できる。

条件切り下げて抜け駆け

 北朝鮮のミサイル実験の直後に、文在寅大統領が「核・ミサイル実験を中断すれば対話できる」との趣旨で発言したことはありました(「北朝鮮のミサイル発射が増幅する米韓の不協和音」参照)。しかし、北朝鮮に「実験を停止すれば対話する」と正式に呼び掛けたのは初めてです。

 米国は驚きました。トランプ政権は北朝鮮との対話を始める条件として「核・ミサイル開発の完全で検証可能な停止」つまり「廃棄」を要求してきました。

 文在寅大統領が言うように「核・ミサイル実験の中断」だけ、つまり「凍結」を交換条件にすると、北朝鮮に核開発の時間を稼がれてしまう可能性が大きいからです。実験を「凍結」しても、開発は続けられますからね。

 そもそも「凍結」を交渉条件に掲げていたのは北朝鮮。これに中国も賛同し、米国にも乗るよう勧めています(「韓国を無視して『パンドラの箱』を開ける米国」参照)。今回、それに韓国が加わったのです。

 交渉事ですから今後、米朝が「凍結」で手を打つ可能性が全くないわけではありません。しかし今現在は、米国は「廃棄」を条件に掲げ、全力で北朝鮮に圧力をかけているのです。その米国を韓国は裏切ったのです。抜け駆けです。