
(前回から読む)
「植民地支配」を新たな外交カードに育てたい韓国。「広島訪問」でも画策した。しかし空振りし「米国の尾」を踏むだけに終わった。
「裏書き」を貰うのに失敗
前回の話で、ようやく分かりました。韓国人が、広島を訪れたオバマ(Barack Obama)大統領に「日本の植民地支配」を叱りつけてもらおうとしたことが。
鈴置:もっとも「植民地カード」に裏書きしてもらうのには失敗しましたけれどね。オバマ大統領は韓国人慰霊碑に行かなかったのです。
でも、大統領は広島での演説で「thousands of Koreans」も被爆したと語りました。
鈴置:うるさく言ってくる韓国にある程度、対応したのは確かです。ただ、広島演説「Remarks by President Obama and Prime Minister Abe of Japan at Hiroshima Peace Memorial」をよく読むと、日本の植民地支配を批判したと取られる表現は避けています。
韓国紙が言い募る「強制連行された」といった形容詞が「thousands of Koreans」に付いているわけではありません。
「半島出身の人々」
確かに、そうでした。
鈴置:ことに日本語版「広島平和記念公園におけるバラク・オバマ大統領の演説」を見ると「植民地」に関し言質を取られないよう、米政府が相当に神経を使ったのが分かります。
米政府は日本語版を仮翻訳と呼んでいますが、英文が正式の文書であるとの意味で「仮」なのです。とりあえずの適当な訳だとか、後で本当の訳が出る、というわけではありません。相当に考えられた訳文です。
「thousands of Koreans」は仮翻訳――日本語版では「何千人もの朝鮮半島出身の人々」と訳されています。
もし、これを「何千人もの韓国人」とか「何千人もの朝鮮人」と訳せば「韓国」ないし「朝鮮」という別の国が当時あって、あるいは別の国が存在すべきであって、その国の国民が広島や長崎で働かされていた――と米国が認識していると受け取られかねない。
「朝鮮半島出身の人々」なら素直に読む限り、朝鮮半島という地域の出身だけれど併合により日本人になっていた人々――との意味になります。
被爆した朝鮮人の多くは自由意思で、一部は徴用で働きに来た人でした。後者は日本国民の義務を果たしていたわけです。
韓国各紙の「強制的に広島や長崎に連れて来られて被爆した」との主張には与しない翻訳になっているのです。
なお、「強制連行」との主張がいかに根拠のないものであるかについては、東京基督教大学の西岡力教授が『日韓「歴史問題」の真実』に詳しく書いています。
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