保険をかけた?

少数説は語りにくいのですね。

鈴置:それは日本でも同じことです。反対に、他の人と同じことを言っておけば、誰からも文句は来ない。

 ただ、朝鮮日報も「保険」をかけたくなったのかもしれません。5月30日になって「萬物相」という名物コラムに、姜仁仙(カン・インソン)論説委員が「広島のオバマ」(韓国語版)を書きました。

 このコラムは「オバマ大統領は150メートル離れた朝鮮人の慰霊碑は訪れなかった」と一言だけ韓国人被爆者に触れた後、以下のように――他紙の社説と同様の主張を展開しました。

  • 原爆で被害を受けた最初の国とのイメージが強くなるほど、日本が第2次世界大戦の加害者であるとの歴史は曖昧になる。
  • 米国は、広島訪問は謝罪ではないと明言した。だが、日本の被害国のイメージを浮き彫りにした。日本が誠意ある謝罪をしていないという事実は薄れた。

一犬、虚に吠ゆれば

なるほど。大記者、姜天錫論説顧問の「顔」は立てつつも「免罪符論」では他紙に追従したのですね。

鈴置:韓国では一度、被害者に認定してもらえば相手を高みから攻撃できます。だから当然、日本もその作戦で来ると思い込んでいる。

 そこでメディアは、謝罪はなかったのに、その事実には目を向けず「また、日本にやられた」と悔しがっているのです。韓国人は「自分の影」に怯えたのです。

 でも、皆が怯えたので韓国では「日本が免罪符を得た」ことになってしまいました。まさに「一犬、虚に吠ゆれば万犬、実を伝う」です。

そう言えば中央日報の社説が、日本の政府だけではなくメディアに対しても「オバマが広島へ行っても、免罪符を貰ったといい気になるなよ」と予め威嚇していましたね。

鈴置:「オバマ大統領の性急な広島訪問は遺憾=韓国」(5月12日、日本語版)です。その部分は以下です。

  • 日本の世論はオバマ大統領の広島訪問自体を謝罪として受け止める可能性が高い。すでに日本メディアはオバマ大統領の広島訪問を「歴史的事件」として特筆大書している。
  • 戦犯国が被害者に化けるという、あきれるような事態が生じないよう、日本政府・メディアは我田引水式の解釈や過度な意味付けを自制しなければいけない。