左派も保守もオバマに不満

いまだに「日本の被害者コスプレ」「米国から免罪符」と書いているのですね。

鈴置:韓国メディアはオバマ大統領の広島訪問前から、小ずるい日本がうまく立ち回って免罪符を得ようとしている、と報じてきました(「日本の『被害者なりすまし』を許すな」参照)。

 広島訪問の後は「オバマが韓国人慰霊碑を無視した」と強調されたこともあって「ずるい日本」と「日本を許した米国」への憤まんが増幅したのです。

 左派系紙、ハンギョレの社説は「オバマ大統領は原爆投下で民間人が被害を受けたことに関し明確に謝罪していない」と書きました。これは保守系紙にない批判でした。が、基本的な主張は保守系紙と同じ「韓国にはちゃんと謝らなかった」との難詰でした。

 「方向を誤ったオバマ大統領の広島訪問」(5月28日、日本語版)のポイントが以下です。

  • オバマ大統領が韓国人慰霊碑に足を運ばなかったのは言い訳の余地がない。韓国人被爆者は日本の植民地支配と原爆の被害を同時に受けた、まさに最も罪とは無縁の民間人だ。
  • オバマ大統領は式典に日本人被爆者を参加させながら、現地を訪れた韓国人原爆被害者とは会おうともしなかった。
  • 安倍政権は早くも今回の訪問を「被害者日本」のイメージ作りに活用している。

 なお、「被害者日本のイメージ作り」に関し、この社説は具体例を挙げていません。記事の中でこの文章だけがぽつんと浮いています。

 ハンギョレも声を大にして「被害者コスプレ」と批判してきたので、それを裏付ける事実が出て来なくとも「安倍がコスプレに活用し始めた」と書かざるを得なかったのでしょう。

音無しの朝鮮日報

最大手の朝鮮日報の社説は「広島訪問」をどう書いたのですか?

鈴置:それが何と、社説では一切取り上げなかったのです。ほぼすべての韓国紙が社説で論じたというのに……。異様でした。

 冒頭でも触れたように「広島訪問」2週間前の5月13日、姜天錫論説顧問が「広島での米日の平和ショーを見守る韓国人慰霊碑」(韓国語版)を書いたばかりでした。

 「我々はオバマ広島訪問に関し『韓国人も謝罪の対象になるのか』という点にこだわっている。米中が対決姿勢を明確にするという世界の大勢の変化を見落とせば、また、国を滅ぼす」との主張です。

 大記者がそう論陣を張ってしまった以上「韓国はちゃんと謝ってもらえなかった」ことを軸にした社説はさすがに書きにくかったと思われます。

 もちろん「韓国人被爆者」には一切触れずに、姜天錫顧問張りの「大局論」を載せる手もあります。でも、そんな社説を載せたら「韓国人被爆者をなぜ無視したのか」と抗議が殺到したでしょう。

 そこで朝鮮日報の論説委員会はこの日「広島」に関してはパスすることにしたと思われます。