6月4日、シンガポールで開催されたアジア安全保障対話で、米国のカーター国防長官が列挙した「安全保障のネットワークに前向きな国」に韓国は含まれなかった(写真=AP/アフロ)

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 「やはり、オバマ(Barack Obama)は日本に免罪符を与えた」と韓国で不満が渦巻く。

たった150メートルなのに

オバマ大統領が5月27日、広島の平和記念公園を訪れました。韓国メディアはどう反応しましたか?

鈴置:どの新聞の社説も「オバマ大統領が韓国人被爆者に十分に気を配らなかったこと」を中心に論じました。

 半面「米中の間で韓国が二股外交を展開し得る空間が一気に狭まった」との指摘は見当たりませんでした。

 朝鮮日報の姜天錫(カン・チョンソク)論説顧問が「大局を見落とすな」と懸念した通りになりました(「韓国は『尊敬される国』になるのか」参照)。

 保守系紙、中央日報の社説(5月28日、日本語版)の見出しは「惜しまれるオバマ大統領の広島訪問=韓国」でした。

 「惜しまれた」のは、韓国人被爆者の慰霊碑に大統領が足を運ばなかったことです。その部分を引用します。

  • オバマ大統領は原爆犠牲者慰霊碑に献花し、故人を追悼した。しかしそこからわずか150メートルの距離にある韓国人犠牲者慰霊碑には足を運ばなかった。演説で「数万人の韓国人」に言及しただけだ。韓国人の慰霊碑に行って韓国人の霊を慰めるべきだった。
  • オバマ大統領は韓半島の非核化にさえ言及しなかった。米国の核兵器が韓国人に残した傷と、韓半島の厳然たる現実に背を向けたまま日本との歴史的な和解に傍点を打った(強調した)広島訪問が、我々を残念な気持ちにさせた。

安倍に与えた免罪符

オバマ大統領は演説で「数万人」ではなく「数千人の朝鮮半島出身の人々」と語っていませんでしたか。

鈴置:韓国では、広島と長崎を合わせて3万人の韓国人が原爆によって亡くなったとされています。中央日報は米大統領の発言を「韓国説」に合わせて書き変えたと思われます。

 東亜日報も5月28日に社説を載せました。日本語版では「原爆慰霊碑を訪れた米大統領、北朝鮮の核を頭上に載せて暮らす韓国」の見出しで掲載されました。

 ただ、大元の韓国語版の「日本の原爆慰霊碑を訪れた米オバマ、北の核の解決はどうするのか」と内容がかなり異なります。そこで韓国語版をテキストにし、ポイントを翻訳します。

  • オバマ大統領は韓国人原爆被害者にも言及したが、150メートル離れた韓国人慰霊碑にはついに訪れなかった。我々としては物足りなさを感じる他はない。
  • 彼は原爆投下に対し謝罪の発言はしなかった。しかし安倍晋三総理と並んで献花し、日本人被害者を抱擁する姿を全世界に見せた。
  • これにより「被害者イメージ」を政治的に利用しようとする安倍政権に免罪符を与えたと言えよう。