米国の「うんざり」が「嫌韓」に

日本が絡むと冷静に考えられなくなる、ということですね。

鈴置:簡単に言えばそういうことです。特に、朴槿恵(パク・クンヘ)政権は条件反射的に動きます。しかし韓国人はその脈絡のなさと言いますか、奇妙さに気づかず「自分を無視する世界」に不満を募らせるのです。

 2015年にも朴槿恵政権は、安倍首相の米上下両院議会演説を阻止しようと執拗に米国に働きかけ、失敗しました(「『安倍演説阻止』に向けた韓国の動き」参照)。

「安倍演説阻止」に向けた韓国の動き(2015年)
2月14日 聯合ニュース「在米韓国人、安倍首相の議会演説阻止に動く」と報道
3月4日 訪米した韓国国会の鄭義和議長、安倍首相の米議会演説に関し米下院議長に「日本の真の謝罪と行動が必要」
3月19日 聯合ニュース「米議会、安倍総理の上下院合同演説を許可する方向」と報道
3月20日 韓国外交部「安倍首相は米議会演説で歴史への省察を示すべきだ」
3月29日 韓国の尹炳世外相「安倍首相の米議会演説と70年談話が日本の歴史認識の試金石になる」
4月2日 鄭議長、訪韓した民主党のナンシー・ペロシ下院院内総務に「日本の首相は米議会演説で過去を認め謝罪すべきだ」
4月2日 尹外相、ペロシ総務に「安倍演説は侵略、植民地支配、慰安婦に関しすでに認めた立場を具体的な表現で触れねばならない」
4月2日 朴槿恵大統領、ペロシ総務に「慰安婦問題の解決は急務」
4月16日 日米韓外務次官協議で韓国の趙太庸第1次官「安倍演説は正しい歴史認識を基に」と注文
4月21日 韓国国会の羅卿瑗・外交統一委員長、リッパート駐韓米大使に安倍首相の歴史認識について懸念表明
4月21日 WSJ「韓国政府が安倍首相の米議会演説に韓国の主張を反映させるべく米広報会社と契約」
4月22日 韓国の柳興洙駐日大使、戦後70年談話で「(侵略、植民地支配、反省の)3つの言葉を使うよう期待」
4月22日 韓国外交部、バンドン会議での安倍演説に関し「植民地支配と侵略への謝罪と反省がなかったことが遺憾」
4月23日 米下院議員25人「安倍首相が訪米中に歴史問題に言及し、村山・河野両談話を再確認する」ことを促す書簡送る
4月23日 韓国系と中国系の団体、元慰安婦とともに米議会内で会見し「安倍首相は演説で謝罪を」と要求
4月24日 韓国外交部「尹外相とケリー米国務長官が電話、歴史対立を癒す努力で一致」と発表
4月24日 ブラジル訪問中の朴大統領「日本に、正しい歴史認識を基にした誠意ある行動を期待」
4月24日 ローズ米大統領副補佐官「安倍首相に対し、過去の談話と合致し、地域の緊張を和らげるよう働きかけている」
4月24日 メディロス米NSCアジア部長「歴史問題は最終解決に達するよう取り組むことが重要」
4月28日 安倍首相、ワシントンでオバマ大統領と会談
4月29日 安倍首相、米上下両院で議会演説。日米同盟の強化を訴え万雷の拍手受ける

 「日本の肩ばかり持つ米国」に怒った韓国人は「それなら我々は中国側に行こう」とも言い出しました。逆恨みです(「『ヴォーゲル声明』に逆襲託す韓国」参照)。

 一方、日米離間を図る韓国に対し、米国の外交界は大いに不信感を抱きました。安倍演説阻止を狙った官民挙げての活動に「韓国疲れ」(Korea Fatigue)という単語までできたのです(「米国の『うんざり』が『嫌韓』に変わる時」参照)。

 なお、韓国独特の奇妙な主張を――つじつまが合わず、時には韓国自らに損をもたらす論理を「コリアン・ロジック」と呼ぶ日本のビジネスマンもいます。

 「広島訪問」では「米議会演説」の時ほどには、朴槿恵政権は露骨な反対運動を繰り広げませんでした。ただ、韓国メディアによると、水面下では米国政府に訪問に対し「強い懸念」を伝えたり、韓国人慰霊碑へのオバマ大統領への献花を要求したりしたようです。

 「議会演説阻止」の失敗に懲りて政府は表に出ず、メディアに米国説得の応援を頼んだ感もあります。「日本の『被害者なりすまし』を許すな」で説明したように、韓国各紙の「ヒロシマ・キャンペーン」には異様な熱が入っていました。

たった1行も書いてないのに

 鮮于鉦論説委員は、こんなことをやっていると世界から――ことに米国から奇異の目で見られるぞ、と警告したのです。このコラムでは、以下のくだりが続きます。

  • ホワイトハウスは、大統領の広島訪問は原爆投下に対する反省や謝罪を意味するものではないと何度も主張してきた。日本の戦争責任に免罪符を与えるものでないとも言った。
  • 日本の政府と主要メディアはやはり、たった一言も、1行もそうした解釈をしなかった。事実、オバマ大統領は謝罪しておらず、頭を下げもしなかった。ひたすら、「核兵器のない世界」を強調した。
  • オバマ大統領が韓国人慰霊碑を訪問しなかったことも、同じ脈絡で理解できる。韓国を無視しているからではなく、自身の訪問が歴史問題、特に植民地支配問題として解釈されたくなかったからではないか。そんな友邦をできるだけ理解すべきではないだろうか。

 鮮于鉦論説委員は、韓国は事実関係及び、米国の真意を誤認していると指摘、「現実を素直に見ようではないか」と呼び掛けたのです。

 「日本政府と主要メディアはたった一言も、1行もそうした解釈をしなかった」とのくだりに、その思いがこもっています。