日米両国政府は「謝罪」を抜きにすることで、オバマ大統領の広島訪問を乗り切った(写真=AP/アフロ)

前回から読む)

 感情のまま、思い付きで動く韓国外交。それを懸念する声が、さすがに内側から出てきた。

謝罪はオバマでなく安倍に求めよ

前回は、韓国は自分たちだけで通じる独自の世界観と理屈で動いている、との話でした。

鈴置:それを誰かが指摘するのかな……と思って見ていたら、6月1日に朝鮮日報の鮮于鉦(ソヌ・ジョン)論説委員が「ベトナム、広島、リ・スヨン」(韓国語版)を書きました。

 2005年から2010年まで東京特派員を務めた後、国際部長などを歴任した記者で、名文家としても名高い。この記事は実に興味深いのです。

 主張の骨格は前回にも紹介した、朝鮮日報の姜天錫論説顧問の「オバマ広島訪問の本質を見落とすな」と同じです。

 ただ、枝葉に当たる部分で「韓国人特有のロジックが外国では奇妙に受け止められるであろう」と指摘したのです。

 記事の構成上は「枝葉」に当たりますが、その割には書き込んであるので筆者は、本当はこれを書きたかったのではないかと思えます。以下、その部分を引用します。

  • 米大統領の広島行きで日本の戦争責任と植民地支配の責任が薄らぐ可能性がある。だから韓国は反対し、懸念してきた。だが、その思い通りにはならなかった。
  • すると今度は反対側の歴史を持ち出した。米国の原爆により数万人の韓国人が命を落とした。韓国は被害国だ。だから米大統領が広島に行くなら、韓国人慰霊碑も参拝せねばならない、という理屈だ。
  • 我々はこうした論法を当然だと考えている。しかし、支配・被支配の善悪論理に慣れていない他国は二律背反的に聞くかもしれない。
  • 韓国は「原爆投下を招いたのは日本だ」と信じている。「韓国人の犠牲が出たのも日本のせい」だ。
  • そうだとするなら、韓国人慰霊碑への訪問を要求する相手は日本の総理ではないのか。なぜ米大統領に韓国人慰霊碑への訪問を要求するのか。米大統領の広島訪問を懸念して反対する一方で、韓国人慰霊碑への訪問を要求するのは矛盾ではないのか――。
  • こうした視点から、米大統領に様々の要求をする韓国をおかしいと考える人々が世の中には存在する。

日本になら何をしてもいい

全くその通りですね。日本がすべて悪いと言うのなら、韓国人被爆者への謝罪を米国の大統領ではなく、日本の首相に要求すべきでした。韓国人はなぜ、こんな奇妙な理屈をこねるのでしょうか。

鈴置:鮮于鉦論説委員は理由をはっきりと書いていません。以下はあくまで私の見方です。

 オバマ(Barack Obama)大統領が広島に行くかもしれないと聞いて「日米関係が深化する」と恐れ、本能的に反対した。行くことが決まった後は、少しでも「深化」の度合いを減らそうと「謝るな」と米国に要求した。「行くこと自体が謝罪だ」との意見が出たので、今度は「自分がのけ者になる」と慌て「韓国にも謝れ」と言い出した……。

 「韓国は『尊敬される国』になるのか」で説明したように、韓国という国は日本が得になると見たら、理屈抜きでとにかく邪魔をします。その結果、しばしば言動のつじつまが合わなくなってしまうのです。

 鮮于鉦論説委員は「支配・被支配の善悪論理」という抽象的な表現を使っています。これは「我が国を植民地化した日本に対してなら何をしてもよいとの韓国人の行動原理」を指していると思われます。