「韓国は中国の一部だ」

「同盟を打ち切るぞ」ですね。

鈴置:米議会の重鎮もはっきりと韓国に申し渡しました。中央日報が「『THAADは米韓同盟による、同盟のための決定だ』と米議員らは韓民求(ハン・ミング)国防長官に語った」(5月29日、韓国語版)でそう報じました。

 「米議員」とは訪韓した上院外交委員会・アジア太平洋小委員会のガードナー(Cory Gardner)委員長です。

 5月29日、韓民求・国防長官に「THAADは米韓同盟による、同盟のための決定だ」と語りました。THAADは同盟の象徴だ。その配備を文在寅政権が見直すというなら同盟を打ち切るぞ、とクギを刺したのです。

 トランプ(Donald Trump)大統領自身が「韓国は歴史的に中国の一部だった」と公然と語り、韓国を切り捨て中国に譲り渡してもよいと言い出しています(「『韓国は中国の一部だった』と言うトランプ」参照)。

 米朝は「第2次朝鮮戦争」の瀬戸際にあります。開戦となれば北朝鮮は韓国、日本、米国をミサイルなどで攻撃します。北朝鮮は核弾頭を搭載したミサイルも使うと宣言しています。

 そんな非常時に、文在寅政権はTHAAD配備を見直すとの公約を掲げたまま。米国が「同盟を打ち切る」と言い出すのは当然です。

 米韓同盟はいつまで持つのか分からない、という認識が米国の専門家の間に次第に広がっています。米国の「同盟打ち切り」は脅しではなく本気なのです。

詭弁で誤魔化す

文在寅政権はどう対応するのでしょう?

鈴置:問題を先送りするつもりでしょう。5月31日、米上院・民主党院内幹事のダービン(Dick Durbin)議員から「THAADに関する立場」を聞かれた文在寅大統領は以下のように応えています。

 中央日報の「文大統領、『THAAD真相調査の支持は完全に国内的措置』」(5月31日、韓国語版)から、発言を引用します。

  • 手続き上の正統性を踏まなければならない。まず(導入に関する)環境影響評価を経ねばならず、議会でも十分な議論がなされる必要がある。これは米国でも全く同じである。
  • 過去の政権の決定ではこの2つのプロセスが十分ではなかった。時間がもう少しかかるだろうが、米国が理解してくれると考える。

 「配備見直し」の公約は取り下げたくない。しかし、見直しに踏み切れば米国から見捨てられてしまう。そこで環境影響評価で時間を稼げばよいと考えたのでしょう。

「米国も同じ。だから理解してくれる」のでしょうか。

鈴置:全くの詭弁です。北朝鮮の核ミサイルが降ってくるかもしれない時に、環境影響評価に時間をかけ、議会に諮ってから防衛兵器を導入するなどということを米国はしません。現に、アラスカやカリフォルニアに実戦配備する迎撃ミサイルの数を一気に増やしました。

 文在寅政権としては、へ理屈をこね、その間に状況が変わるのを待つしかないのです。米国側も大統領の詭弁を聞いて唖然としたと思います。が「今すぐにTHAADを撤去せよ」と言われなければ「同盟を打ち切る」とは言い出さない。

巡航ミサイルは600発

「状況が変わる」なんてことがありますか?

鈴置:北朝鮮の核問題が解決すれば、韓国は米国に対し「THAADを撤去してほしい」と言いやすくなります。対北用ということで緊急配備されたのですから。

 トランプ政権は米国の軍事的圧力と中国の経済的な圧力で北朝鮮に核を放棄させるつもりです。が、いつまでも待つつもりはありません。早ければ6月末、遅くとも8月末までに北朝鮮への攻撃を開始するとの観測が高まっています。

 対北攻撃は航空母艦を3-4隻、ことによれば5-6隻使い、空軍や海兵隊の爆撃機も可能な限り出撃する見込みです。朝鮮半島周辺海域から600発の巡航ミサイルを撃ち、米本土からも大陸間弾道弾(ICBM)を発射する構えです。

 「第2次朝鮮戦争」が始まれば、北朝鮮の軍事施設はほぼ完ぺきに破壊されます。結果的に韓国もTHAADで米中板挟みに悩む必要はなくなります。