対話を哀願する左派政権

 文在寅大統領も「NOと言えない」のが明らかになったのは政権が発足して4日後の5月14日でした。この日、北朝鮮は大統領の就任後、初めてとなる弾道ミサイルを撃ちました。

 文在寅大統領は「強く糾弾する」と北朝鮮を非難しながらも「対話路線は変えない」と語りました。そのうえ「ミサイル発射をする限り対話しない」つまり「ミサイル発射を辞めたら対話する」とも表明してしまいました。(「北朝鮮のミサイル発射が増幅する米韓の不協和音」参照)。

 こんなことを言えば「よほど対話してほしいのだな」と北朝鮮から足元を見られてしまいます。さらには「俺を怒らせるなよ。対話してやらないぞ」と脅されてしまいます。

 南北関係の改善が始まらないと、文在寅政権は一部の国民から「公約は空手形だった」と批判されるでしょう。保守派からも「ほら見ろ。関係改善など理想論じゃないか」と馬鹿にされてしまう……。一方、北朝鮮は対話などしなくても困らない。

 北朝鮮にとって文在寅政権の登場は干天の慈雨でした。世界中から「核を捨てろ」と圧迫される時に「対話を哀願してくる」ありがたい政権が南に発足したのです。

中国にも譲歩を開始

「文在寅の韓国」を米国が警戒するわけですね。

鈴置:朴槿恵(パク・クネ)政権の米中二股外交に米国は手を焼きました。その「離米従中」に今度は「親北」も加わったのです。米国は北朝鮮だけではなく、韓国も潜在的な仮想敵と見なしていると思われます。

文在寅政権は中国にも「NO」と言いません。

鈴置:5月19日に大統領特使として習近平主席と会った李海瓚(イ・ヘチャン)元首相は大きく譲歩しました。

 朴槿恵政権が「中国に害を与えるものではない」と主張していたTHAAD(地上配備型ミサイル防衛システム)について「中国の憂慮を理解する」と述べたうえ、配備見直しに関する協議まで申し出たのです(「文在寅政権は『五面楚歌』から脱出できるか」参照)。

なぜ中国に対し、そんなに弱腰なのでしょうか。

鈴置:文在寅政権は反米政権です。米国の神経を逆なでする数多くの公約を掲げて当選しました。米国と敵対する以上、中国に傾かざるを得ないのです。

●米国が神経を尖らす文在寅の「離米従中親北」公約
・早期の南北首脳会談
・在韓米軍へのTHAAD配備の見直し
・開城工業団地と金剛山観光の再開
・戦時作戦統制権の返還
・日韓慰安婦合意の破棄または再交渉