ひしと抱き合う写真

北朝鮮側が勝手に言っている可能性は?

鈴置:あり得ません。南北が合意した「板門店宣言」にも同様のくだりがあるからです(「『民族の祭典』に酔いしれた韓国人」参照)。

・南と北は、完全な非核化を通じて核のない韓半島を実現するという共通の目標を確認した。
・南と北は、北側が取っている主動的な措置が韓半島の非核化のために非常に意義があり、大きい措置だという認識を共にして、今後それぞれ、自己の責任と役割を果たすことにした。
・南と北は、韓半島の非核化のための国際社会の支持と協力を得るために積極的に努力することにした。

 5月26日の南北首脳会談は、4月27日の「南北」で交わした板門店宣言の中核である「核問題での共闘」を再確認するのが目的だったのです。

その「南北共闘」はさりげなく謳われただけです。米国への有効なメッセージになるでしょうか?

鈴置:確かに。そこで南北は演出したと思います。両首脳がひしと抱き合っている写真です(1ページ目参照)。韓国は5月26日夕刻に同日午後の首脳会談開催を発表した。しかし中身に関しては翌27日の午前10時まで明かさなかった。

 世界のメディアはこのニュースを報じる際、「南北抱擁」などの写真を中心に報じるしかなかった。結果、たいして中身のない会談だったけれど、「南北が運命を共にする覚悟」は世界に発信できたのです。

南北共闘で時間稼ぎ

でも、どんな小細工をしようと北朝鮮は――南北朝鮮は、絶体絶命の窮地にあります。

鈴置:その通りです。首脳会談に応じても、応じなくても米国から軍事攻撃される可能性が高まった。少なくとも経済制裁の強化は免れない。

 こうなったら、米朝首脳会談を開くか開かないか、をあやふやにすることで時間稼ぎするしかありません。南北は、口では「米朝」に前向きですが、本当に開いたら地獄が待っているのです。

トランプ大統領が開催に前向きの発言に転じました。

鈴置:AFPの「米朝会談、6月12日開催に向け『非常に順調』トランプ氏」(5月27日、日本語版)によると5月26日、大統領は「(米朝首脳会談は)非常に順調に進んでいる」「われわれは6月12日にシンガポールでの開催を目指している。そのことに変わりはない」と語りました。

 それこそ北朝鮮――南北朝鮮への圧迫でしょう。「会談に応じろ」との。

●北朝鮮の非核化を巡る動き(2018年)
1月1日金正恩「平昌五輪に参加する」
1月4日米韓、合同軍事演習の延期決定
2月8日北朝鮮、建軍節の軍事パレード
2月9日北朝鮮、平昌五輪に選手団派遣
3月5日韓国、南北首脳会談開催を発表
3月8日トランプ、米朝首脳会談を受諾
3月25―28日金正恩訪中、習近平と会談
4月1日頃ポンペオ訪朝、金正恩と会談
4月17―18日日米首脳会談
4月21日北朝鮮、核・ミサイル実験の中断と核実験場廃棄を表明
4月27日南北首脳会談
5月4日日中と中韓で首脳の電話協議
5月7-8日金正恩、大連で習近平と会談
5月8日米中首脳、電話協議
  トランプ、イラン核合意から離脱を表明
5月9日ポンペオ訪朝、抑留中の3人の米国人を連れ戻す
  日中韓首脳会談
  米韓首脳、電話協議
5月10日日米首脳、電話協議
5月16日北朝鮮、開催当日になって南北閣僚級会談の中止を通告
5月16日北朝鮮、「一方的に核廃棄要求なら朝米首脳会談を再考」との談話を発表
5月20日米韓首脳、電話協議(米東部時間では5月19日)
5月22日米韓首脳会談
5月24日北朝鮮、米韓などのメディアの前で核実験場を破壊
5月24日トランプ、金正恩に首脳会談中止を書簡で通告
5月26日南北首脳会談、板門店の北側施設で
6月8-9日G7首脳会議、カナダで
6月12日史上初の米朝首脳会談?

次回に続く)

大好評シリーズ最新刊 好評発売中!
Amazon「朝鮮半島のエリアスタディ 」ランキング第1位獲得!
孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録