「盧武鉉 シーズン2」

 米政府だって韓国の新政権の性格は見抜いています。大統領が招かれたといって韓国は喜んでいるわけにはいきません。「北東アジアのタリバン」のボスを呼び付けて、性根を叩き直そうとの米国の意図が明白だからです。

 この社説を書いた朝鮮日報の論説委員が「盧武鉉 シーズン2」を予想して、頭を抱えている姿が目に浮かびます。

この社説は習近平主席との電話会談に関しても懸念を表明したのでしたね。

鈴置:その通りです。THAAD配備に関し、文在寅大統領は「北朝鮮の挑発がなければ問題解決は容易になる」と語ってしまいました(「北朝鮮のミサイル発射が増幅する米韓の不協和音」参照)。

 朝鮮日報は「北朝鮮が追加の挑発をしなければTHAADを撤去するつもりであるかに聞こえる」と批判したのです。もし、北朝鮮が嘘でも「ミサイルの試験はやめた」と言ったら、中国は「韓国も約束通り、THAAD撤去を米国に求めよ」と命じることでしょう。

 左派政権の誕生で、韓国の米中板挟みの状況はもっと厳しいものになります。米国は韓国の「離米従北」や「離米従中」が激化すると読んで圧力を増す。中国も米国との関係が悪い左派政権なら脅しの効果が大きいと踏んで、より怖い顔をするからです。

WPも文在寅を突き放した

 それは大統領特使の派遣で明確になりました。文在寅大統領は5月17日に米国と日本、18日には中国に特使を送りました。

 米国に向かったのは中央日報のオーナーで、今年3月まで同社の会長だった洪錫炫(ホン・ソクヒョン)氏。同氏は5月21日に大統領統一外交安保特別補佐官に任命され、政権入りしています。

 ワシントンポスト(WP)の特使に関する記事は冷たいものでした。「South Korea’s president and Trump are off to a good start, but can it last?」(5月19日)という記事の見出しからして、韓国を突き放したのです。

 WPの論説委員会は洪錫炫氏にインタビューし「(様々の懸案について)韓米両国は完全に合意している」との談話を引き出しました。原文は以下です。

  • “At the moment, we are in full agreement,” Hong said in a meeting with the editorial board.

 見出しの「トランプと文はいい滑り出し」もここからとったのです。しかし、見出しの後半部分は「でも、それがいつまで続くのか?」です。

 WPは疑いの根拠をはっきりと示していません。が、「トランプと文は意見が異なる問題で真剣に議論することになろう」との1文で記事を結んでいます。WPも北朝鮮への姿勢を巡り、米韓が激しく対立する「盧武鉉 シーズン2」を予想しているのです。

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