馬鹿にされる地政学

「地政学」という言葉が出てきましたね。

鈴置:姜天錫論説顧問は「現実を見ろ」くらいの意味で使っているのだと思います。でも、この単語の使い方はピンと来ます。

 2009年、韓国の保守系紙の政治記者に「結局、韓国は海洋勢力側に残るのですか、それとも大陸側に行くのですか」と聞いたことがあります。「米中どちら側の国になるのですか」と露骨な質問をするのを避けたつもりでした。

 すると「そんな地政学的な見方をまだしているのですか」と聞き返されました。この回答が意味することは2つあります。

 まず、米中双方とうまくやっていけると韓国人が固く信じていること。もう1つは、地政学に代表される現実主義的な――観念的な理想論を排する考え方は古臭く危険である、と韓国人が思うようになったことです。

 ソウル五輪(1988年)頃までは、日本人の平和ボケを韓国人は苦笑して眺めていたものです。北朝鮮と厳しく対峙していた当時の韓国にとって「後背地・日本」の平和ボケは危険なものでもありました。

 それが、韓国人に地政学的な言葉を使って質問をするだけで「軍国主義者扱い」されるに至ったのです。「平和ボケすることが先進国の証(あかし)」と彼らは思い始めたようでもあります。

日本の後ろには海洋大国がいた

「100年前にも読み違えた」とは?

鈴置:姜天錫論説顧問は具体的には書いていません。勝手に忖度すべきではありませんが、常識的にはこういうことかと思います。

  • 日清戦争でも日露戦争でも、朝鮮は建前は中立を維持した。が、心情的には大陸の大国である清やロシアの味方だった。日本は野蛮な小国との意識からである。
  • しかし、日本の後ろには英国や米国など海洋勢力が付いていた。それを見落とした朝鮮は勝ち馬に乗れず、植民地に転落した。

 でももう一度言いますと、姜天錫論説顧問はここまで踏み込んで書いているわけではありません。

 記事の趣旨はあくまで「韓国人も謝罪や追悼の対象か」といった狭い視野で外交を語るな、大局を見ろ――との警告です。