暗殺論者を交渉役に

米国が暗殺を敢行すると?

鈴置:それは分かりません。しかしポンペオ国務長官はCIA長官だった2017年7月20日に「金正恩暗殺」を公然と語った人です(「金正恩すげ替え論」を語り始めた米国)。

 トランプ大統領というか、米国という国はなかなかです。「暗殺発言」の10カ月後には、その提唱者を北朝鮮に送り、金正恩委員長と交渉させたのですから。

 完全な非核化から逃げ回るなら「別の手もあるぞ」との脅し――。そんな圧迫感を今、金正恩氏が感じていないはずがありません。

我々はいつでも対話する

 さっそく5月25日早朝、朝鮮中央通信が金桂官(キム・ゲグァン)第1外務次官の談話を報じました。「そんなに怒らなくてもいいじゃないか。会談を開こう」と、とりあえずは白旗を掲げて見せたのです。 

 「朝鮮外務省第1次官が談話を発表」(5月25日、日本語版)から肝心な部分を引用します。

・歴史的な朝米首脳の対面について言うなら、われわれはトランプ大統領が過去のどの大統領も下せなかった勇断を下して首脳の対面という重大な出来事をもたらすために努力したことについて依然として心のうちで高く評価してきた。

・われわれの(金正恩)国務委員長も、トランプ大統領と会えば良いスタートを切ることができると述べて、そのための準備に努力の限りを尽くしてきた。

・朝鮮半島と人類の平和と安定のために全力を尽くそうとするわれわれの目標と意志には変わりがなく、われわれはつねにおおらかに開かれた心で米国側にタイムとチャンスを与える用意がある。

・われわれは、いつでもいかなる方式でも対座して問題を解決していく用意があるということを米国側に再び明らかにする。

●北朝鮮の非核化を巡る動き(2018年)
1月1日金正恩「平昌五輪に参加する」
1月4日米韓、合同軍事演習の延期決定
2月8日北朝鮮、建軍節の軍事パレード
2月9日北朝鮮、平昌五輪に選手団派遣
3月5日韓国、南北首脳会談開催を発表
3月8日トランプ、米朝首脳会談を受諾
3月25―28日金正恩訪中、習近平と会談
4月1日頃ポンペオ訪朝、金正恩と会談
4月17―18日日米首脳会談
4月21日北朝鮮、核・ミサイル実験の中断と核実験場廃棄を表明
4月27日南北首脳会談
5月4日日中と中韓で首脳の電話協議
5月7-8日金正恩、大連で習近平と会談
5月8日米中首脳、電話協議
  トランプ、イラン核合意から離脱を表明
5月9日ポンペオ訪朝、抑留中の3人の米国人を連れ戻す
  日中韓首脳会談
  米韓首脳、電話協議
5月10日日米首脳、電話協議
5月16日北朝鮮、開催当日になって南北閣僚級会談の中止を通告
5月16日北朝鮮、「一方的に核廃棄要求なら朝米首脳会談を再考」との談話を発表
5月20日米韓首脳、電話協議(米東部時間では5月19日)
5月22日米韓首脳会談
5月24日北朝鮮、米韓などのメディアの前で核実験場を破壊
5月24日トランプ、金正恩に首脳会談中止を書簡で通告
6月8-9日G7首脳会議、カナダで
6月12日史上初の米朝首脳会談→中止

次回に続く)

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孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録

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