「戦犯国家」はひれ伏せ

「戦犯国家」とはあまり聞きなれない言葉ですが。

鈴置:「日本は戦争を起こした国だ。韓国の前で永遠にひれ伏さなければならない」という主張を具現化した単語です。2010年頃から韓国人が使い始めました。私が初めに見たのは朝鮮日報だったかと思います。

 国際社会で日本より優位に立つため、官民挙げて「歴史カード」を磨くのが韓国の基本戦略でありまして「戦犯国家」はその一環です。しかし今、韓国人はそのカードが、相次ぐ「外交敗戦」で磨滅しかけたのではないかと不安にかられています。

 だから、各紙とも「歴史カード」を維持すべく「まだ日本は韓国に謝罪していない。だからオバマ大統領も謝罪すべきではない」と叫んでいるのです。オバマ大統領が謝罪したら完全に「日本に免罪符を与える」ことになると理解しているからです。

 韓国紙の「オバマ謝罪」へのこだわり方は異様です。東亜日報の社説「米大統領の初の広島訪問を見る韓国人の目」(5月12日、日本語版)をご覧下さい。

  • ホワイトハウスは「『核兵器のない世界』の平和と安全を追求するオバマ大統領の約束を強調するため」とし、「原爆投下に対する謝罪と解釈されるのは誤り」と明らかにした。しかし、米紙USAトゥデイが指摘したように、日本人はオバマ大統領の訪問そのものを謝罪と解釈するムードだ。

 米政府が「謝罪ではない」と言っているのに「でも、日本は謝罪を得たとして威張り出すに違いない」と心配したのです。

 先ほど引用した中央日報の社説「オバマ大統領の性急な広島訪問は遺憾=韓国」の「我田引水式の解釈や過度な意味付けを自制しなければいけない」とのくだり。

 日本の政府とメディアに対し「謝罪と認識したら許さないからな」と威嚇したわけで、韓国人がいかに気にしているかを示しています。

嫉妬と事大主義

普通の韓国人が「歴史カードの磨滅」を恐れるものでしょうか。

鈴置:そこまで深くは考えない人もいるでしょう。ある韓国の識者は、普通の人の不満はもっと単純で「日本がうまいことやった。不愉快だ」「オバマは日本ばかり可愛がる」といった感じと解説します。

 趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムに、韓国紙の広島報道を批判した「『100年前の気分』にとらわれる韓国」(5月14日、韓国語)という記事が載りました。ここでも、韓国メディアを冷ややかに見る読者が、以下を書き込みました。

  • 最近、韓国メディアの記者らは米国と日本が蜜月関係になれば韓国が危機に陥ると焦燥感を募らせているようです。日本への嫉妬と米国への事大主義が合わさった心理でしょう。

 事大主義とは「米国の大統領が免罪符を発行する」という韓国紙の発想を厳しく批判したものです。

広島訪問は手土産

それと、日本への嫉妬ということですね。

鈴置:同じ新聞でも、社説ほど裃(かみしも)を着ない雑報や解説記事は、より露骨に「日本に負けた」と報じて、読者の嫉妬心をかき立てています。

 朝鮮日報の「オバマ、日本の宿願かなえる」(5月11日、韓国語版)も「安倍外交の勝利」と書きました。

  • オバマの広島訪問を粘り強く進めてきた安倍晋三総理としては「第2次世界大戦の敗戦後、初めて戦勝国である米国の広島訪問を成し遂げた総理」との業績を上げることになる。

 左派系紙、ハンギョレの解説記事「『非核化』強調するオバマ大統領、『原爆被害』知らせたい安倍首相」(5月11日、日本語版)はサブ見出しに「日本は外交的勝利」を取り、前文でも以下のように書きました。

  • 日本にとっては、今年自国で開かれる主要7カ国(G7)首脳会議の日程を活用した日本外交の勝利ともいえる。

こんな記事を読む韓国人は面白くないでしょうね。

鈴置:だから「確かに韓国は外交戦でまた負けた。だが、それはオバマにゴマをするという、せこい手を安倍が使ったからだ」との趣旨の説明もくっついています。そこでは広島訪問は日本への「報奨」や「贈り物」と表現されています。

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