G7で「空爆辞さぬ」と根回し

では、首脳会談はどういう展開になるのでしょう。

●米朝首脳会談、3つのシナリオ
米国、リビア方式での非核化を要求
北朝鮮が受諾北朝鮮が拒否
①米国などによる核施設への査察開始②米朝対話が継続③米国、軍事行動ないし経済・軍事的圧迫強化

鈴置:「米朝首脳会談、3つのシナリオ」で言えば、北朝鮮は①の「完全な非核化を受諾」しながら②の「時間を稼ぎながら完全な査察を防ぐ」行動をとる可能性が高い。少なくとも①のフリをしないと、米国が③の「軍事行動ないし経済・軍事的な圧迫強化」を採用するからです。

実質的には進展しないのですね。だとすると、米国は米韓同盟廃棄などという思い切ったカードを切る必要があったのでしょうか。

鈴置:大いにあったと思います。まず、北朝鮮を対話に引き出すことができた。対話なしでは①にも③にも進みにくく、問題が先送りされてしまう。

 さらに米国は「北朝鮮の要求である『朝鮮半島全体の非核化』まで飲んだのに、北朝鮮は前言を覆して『完全な非核化』を拒否した」と主張できるようになりました。

 「北朝鮮の非核化を巡る動き」をご覧下さい。5月22日の米韓首脳会談の直後にはG7首脳会談が開かれます。

 トランプ大統領は主要な同盟国の首脳に「米韓同盟の廃棄という譲歩までしたのだ。それを北朝鮮が受けないと言うなら空爆も辞さない」と根回しすると思います。つまり③の下準備です。

●北朝鮮の非核化を巡る動き(2018年)
1月1日金正恩「平昌五輪に参加する」
1月4日米韓、合同軍事演習の延期決定
2月8日北朝鮮、建軍節の軍事パレード
2月9日北朝鮮、平昌五輪に選手団派遣
3月5日韓国、南北首脳会談開催を発表
3月8日トランプ、米朝首脳会談を受諾
3月25―28日金正恩訪中、習近平と会談
4月1日頃ポンペオ訪朝、金正恩と会談
4月17―18日日米首脳会談
4月21日北朝鮮、核・ミサイル実験の中断と核実験場廃棄を表明
4月27日南北首脳会談
5月4日日中と中韓で首脳の電話協議
5月7-8日金正恩、大連で習近平と会談
5月8日米中首脳、電話協議
  トランプ、イラン核合意から離脱を表明
5月9日ポンペオ訪朝、抑留中の3人の米国人を連れ戻す
  日中韓首脳会談
  米韓首脳、電話協議
5月10日日米首脳、電話協議
5月22日米韓首脳会談
5月23~25日北朝鮮、米韓などのメディアの前で核実験場を破壊
6月8-9日G7首脳会議、カナダで
6月12日史上初の米朝首脳会談、シンガポールで
「米朝」の後、日米中南北の間で2カ国首脳会談か

日本人に求められる覚悟

「米朝」の後、トランプ大統領は日本に立ち寄る方向です。

鈴置:トランプ大統領は安倍晋三首相に覚悟を求めることになるでしょう。米韓同盟が消滅すれば、日本が大陸に立ち向かう最前線になります。あるいは米国が軍事攻撃に踏み切れば、日本にも火の粉がふりかかります。いずれにせよ、日本人は覚悟を固める必要があるのです。

 「米朝」の後には「米韓」「中朝」などの首脳会談も開かれると見られています。あるいは米中南北の4者会談が開催されるかもしれません。

 今後、関係国は朝鮮半島の安全保障体制の変更について――たぶん、半島全体の非核化と中立化を話し合うことになるでしょう。

近未来小説『朝鮮半島201Z年』では最後に、米中南北の4カ国が参加する「朝鮮半島サミット」が開かれます。

鈴置:その場で半島全体の中立化が決まります。亜細亜経済新聞の内海利兵衛記者はそれを半島全体の中国化と断じ「中国手品を見る思い 本質は半島の完全支配」という見出しの記事を書くのです。

次回に続く)

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孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録