「核の傘」を信じる韓国人

「核の傘の喪失」は「極端な話」に過ぎないのですね、韓国紙にとって。

鈴置:中央日報の社説「米朝会談で『完全な非核化』ビッグディールを期待する」(日本語版)はもっと楽観的でした。北朝鮮が「核の傘の撤去」に関して要求する可能性は低いと見たのです。

・韓半島非核化に米朝が合意する場合、韓米連合訓練時に米国は核兵器を搭載できる戦略資産の韓半島展開を中断する可能性がある。北朝鮮が「核の傘禁止」まで要求するかはまだ未知数だ。

北朝鮮が「核の傘撤去」を要求しないことがあり得ますか。

鈴置:あり得ません。この社説は「半島の非核化」が、核兵器を搭載する原子力潜水艦や戦略爆撃機の半島周辺への展開を禁じることを意味するとの前提で書いています。

 そうだとして、どうやって米国は、原潜が半島周辺に来ていないと保証できるのでしょうか。米国がそう宣言すれば、北朝鮮は信じるのでしょうか。信じるわけはありません。

 そもそも、米本土のICBM(長距離弾道弾)は北朝鮮を射程に収めているのです。原潜や戦略爆撃機が半島の近海に来るか来ないかは本質的な問題ではないのです。

 中央日報の理屈はたぶん、こうでしょう。南北朝鮮は核を持たないことにしよう。一方、核大国からの脅威に対しては、北は中国の、南は米国の傘に頼る体制を続ける。それで南北はすべて対等になる。だから韓国は米国の核の傘を維持してよいのだ――。

 この理屈は中朝同盟が機能しなくなっていることを無視しています。ならず者国家の北朝鮮に手を焼いた中国は、日本の記者にまで「北朝鮮との同盟はもうありません」と堂々と言ってきます。

 だからこそ、北朝鮮は自前の核を持とうと、核開発を加速したのです。北が「韓国は米国の傘の下にいていいよ」と言うわけがないのです。

「離米従中」は1990年代から

韓国紙はなぜそんなに楽観的なのでしょうか。

鈴置:自分が米国に深く信頼される、重要な同盟国であると思い込んでいるのです。米国の軍関係者は韓国の不誠実さに呆れ果てているというのに。

 韓国は1990年代半ばから中国にすり寄り、米国の軍事情報を流し始めた。米国防総省が日本の防衛省に「中国に漏れるから、韓国に機密を漏らすな」と注意してきたほどです(「『懲りない韓国』に下す米国の鉄槌は『通貨』」参照)。

 米軍関係者は2010年ごろから「米韓同盟はいつまで持つか分からない」と言い始めました。まだ、保守政権の時です。そして、文在寅(ムン・ジェイン)という左派政権が登場して完全に見限りました。

 文在寅政権は、北朝鮮のミサイルから韓国人と在韓米軍を守るTHAAD(地上配備型ミサイル迎撃システム)の首都圏への配備を拒否するに至りました。中国の圧力に屈したのです(「中国に『降伏文書』を差し出した韓国」参照)。

 さらに文在寅大統領がトランプ大統領との会談後に発表した共同発表文を1日後に否定しました。中国の海洋進出を牽制する部分で、これまた中国の顔色を見てのことでした(「トランプとの合意を1日で破り、変造した文在寅」参照)。

 トランプ政権が米韓同盟を捨てる決断を最終的に下したのは、4月27日の南北首脳会談だったと思います。

 この日に発表された板門店宣言で、南北がはっきりと「半島全ての非核化」をうたったからです(「『民族の祭典』に酔いしれた韓国人」参照)。