日本が恐れるべき「中途半端な解決」

南北首脳会談は対北制裁の輪を壊す、ということですね。

鈴置:仮に韓国により制裁の輪が壊されても、米国が黙って引き下がるとは思えません。ただその際、完全な核問題の解決には至らず、中途半端に終わってしまう危険性を千英宇氏は訴えています。

  • トランプ大統領が非核化を事実上放棄し、核・ミサイル実験の中断と凍結を目指して北朝鮮との交渉にはいってしまうかもしれない。それは北の核武装の正当化を意味しかねない。

 こうなったら日本も非常に困るのです。北朝鮮が米国に届く核ミサイルは放棄するものの、日本に届く分に関しては保持してよい、ということになるからです。

 韓国に保守政権が誕生していれば日韓で力を合わせ、米国が「中途半端な結末」に走らないよう防ぐことができたかもしれません。

保守政権ならできましたか?

鈴置:確かに難しかったかもしれません。そもそも韓国には米国と軍事的にも協力し、北朝鮮の核を完全に解決しようとの空気が乏しいからです(「米国に捨てられ、日本に八つ当たりの韓国」参照)。米国と完全なスクラムを組もうという李東馥氏や千英宇氏はいまや少数派です。

 そして韓国では「米国から軍事攻撃を教えられたら北に相談する」という文在寅政権が誕生してしまったのです(「米国に捨てられ、日本に八つ当たりの韓国」参照)。

対話したければカネを出せ

北朝鮮の弾道ミサイル発射に対し、文在寅大統領も非難しました。韓国も軌道修正して米国側に戻りませんか?

鈴置:大統領の「非難」に惑わされてはなりません。政権発足後初の北朝鮮のミサイル発射を受け、5月14日朝、青瓦台(大統領府)は国家安全保障会議(NSC)常任委員会を開きました。

 そこでの文在寅大統領の発言のうち「対話」関連部分を聯合ニュース「文大統領 北の挑発に断固対応=『態度変化あってこそ対話可能』」(5月14日、日本語版)から拾います。

  • 北との対話の可能性を開いてはいるが北が判断を誤らないよう、挑発に対しては断固たる対応をとるべきだ。対話可能性を探るからといって誤判するな。
  • (北朝鮮との対話については)北側の態度に変化があったときに可能になるということを示すべきだ。

 要は(1)対話路線は変えない(2)弾道ミサイル発射を中断するなど、北朝鮮が穏健路線に転じれば対話――つまりは開城工業団地などを通じた対北送金の再開に踏み切ってもよいということです。

 韓国の大統領がこう表明したため、北朝鮮は今後「弾道ミサイルを撃つぞ」と脅すことで、韓国から様々の譲歩を引き出せるようになったのです。北は韓国に以下のように言えばよいからです。

  • 「ミサイルを撃ったら対話しない」などと偉そうなことを言っていいのか。我々が対話にこだわっているのではない。対話ができなければ困るのはお前ではないか。対話など意味がないと言っていた保守派から大笑いされるからな。「対話」を不可能にするミサイル発射が嫌なら、俺が要求するモノをさっさと持ってこい。

主導権を北に握られた韓国

 初めから「対話」を掲げてはいけないのです。足元を見られてしまいます。主導権を北朝鮮に握られた韓国は、どんどん振り回されていくでしょう。そんな韓国をトランプ大統領は「やれやれ」といった顔で見ていると思います。

次回に続く)

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孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』『米中抗争の「捨て駒」にされる韓国』 に続く待望のシリーズ第9弾。10月25日発行。