THAADで軍事主権放棄

米国が韓国を疑いの目で見るのも当然ですね。

鈴置:THAADの問題でも文在寅大統領は米国を裏切って中国側に行くのではないかと疑われています。5月11日、習近平主席と電話会談しましたが、そこにも微妙なくだりがありました。

 朝鮮日報の社説「四面楚歌という安保の現実を示した米中日トップとの通話」(5月12日、韓国語版)は以下のように書きました。

  • 習近平主席は異例にも当選を祝う電話をかけてきて「(THAADに関わる)中国の重大な憂慮事項を(韓国が)重視し、実質的な行動をとるよう期待する」と語った。
  • 文大統領はこれに対し「北朝鮮の追加の挑発がなければTHAAD問題の解決は容易になる」と答えた。両国の発表を見れば、北朝鮮が追加の挑発さえしなければ、中国の希望通り、THAADを撤去するかのように聞こえる。
  • もし実際にそうなったなら、北の核・ミサイルに対する軍事的な備えを放棄したことになり、外国が我が国の軍事主権に介入する道を開く先例となる。

中国に安保代表団

 こんな批判に文在寅大統領は馬耳東風。習近平主席との電話会談を受け、直ちに中国にTHAADと北朝鮮の核を議論する代表団を送ることを決めました。

 左派系紙のハンギョレは当然のことながら、前向きに報じました。「韓中関係復元に向け『THAAD外交』始動」(5月12日、日本語版)から要約しつつ、引用します。

  • 文在寅大統領が11日、習近平国家主席との電話会談で「THAADおよび北朝鮮核問題を議論する代表団」を中国に派遣する計画を明らかにするなど、THAAD外交を始動させた。
  • 前日の就任演説でTHAAD問題について「米国、中国と真剣に交渉する」と明らかにしたことから一歩踏み込み、中国との対話準備に本格的に乗り出した。
  • 文大統領は、国内的に国会批准同意の過程を通じて公論化過程を経るものと見られる。外交的には公論化過程で確認された国民世論をもとに、米国、中国などとの協議に乗り出すものと予想される。

 国会でTHAAD配備に確実に賛成するのは第2党の自由韓国党(107議席)と第4党の「正しい政党」(20議席)。全議席は300ですから「配備賛成法案」が可決する可能性は低い。

 仮に第3党の「国民の党」(40議席)が賛成に回っても国会を通りません。韓国には与野対決法案は5分の3の180票の賛成がないと採決に回せないという奇妙な法律があるからです。なお、与党の「共に民主党」は第1党で120議席です。

 国会がTHAAD配備を認めなければ、これを「国論」として米国には撤去させる一方、その実績をテコに中国には北朝鮮の核などで韓国に有利に動いてくれと言うつもりでしょう。