「損切り」の対象に

これまでは、そんな韓国でも許されてきた……。

鈴置:神戸大学大学院の木村幹教授は「失礼な奴でも自分の陣営に置いておくことで大国は度量を見せる」と説明しています(「『南シナ海』が揺らす米韓同盟」参照)。

 でも、そんな度量の重要さに考えが及ぶのは政治家だけです。株主の短期的な利益を極大化することが仕事の経営者は、会社に損害をもたらす要因は直ちに切り捨てます。

 崔普植先任記者の主張する「全斗煥方式」――日本の無賃乗車を声高に言い立てて費用分担を転嫁する方式が実施されなくとも、トランプ的な発想が広がるほどに米韓同盟は危機に瀕するのです。

なぜ、韓国人はそれに気がつかないのでしょうか。

鈴置:「米韓同盟は血盟だ」と信じているからです。米国は朝鮮戦争で4万人もの戦死者・行方不明者を出した。だから米国にとって韓国は何があっても手放せない存在だ――という神話と言いますか、信仰が韓国にはあるのです(「『中国に立ち向かう役は日本にやらせよう』」参照)。

 だから舌先三寸で適当なことを言っておけば、米国との同盟は続く――といった言説が、韓国では堂々とまかり通るのです。

 それも、米国の有力な大統領候補者が「これ以上、損害を増やさないために同盟の見直しを検討しよう」と“損切り”を言い出した時に、です。

「全額、支払おうではないか」

 もっとも少数ながら、韓国が直面する危うさに気がついている韓国人もいます。「ヴァンダービルド」の匿名を使い、外交・安保を縦横に論じる識者です。

 興味深い主張をしています。趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムの「トランプの暗示は『韓日は米軍撤退に備え、核武装を検討せよ!』」(3月27日、韓国語)から、要約して引用します。

  • トランプの要求通り、労務費、施設建設費など在韓米軍を維持するための費用は100%支払えば良い。すでに韓国はその40%を毎年、負担している。残りの60%の1兆3800億ウォンを追加して支払うだけで、在韓米軍の130兆ウォンの装備を我が国に維持できると考えれば安いものだ。
  • 2000年に韓国政府が正式に研究調査した在韓米軍の装備の価値が1112億5000万ドル(約130兆ウォン)だった。装備は高度化され続けており、2000年時点と比べその価値が飛躍的に高いのは間違いない。

日米同盟は片務条約

思い切った主張ですね。

鈴置:ヴァンダービルド氏は前々から「二股外交をこのまま続ければ、いつかは米国に捨てられるぞ」と朴槿恵政権に警告を発してきました。

 さらに、トランプ候補の浮上とともに「同盟国は米国ばかり頼るな」との「トランプ的発想」が米国で盛り上がると読んだのです。

 日本も他人事ではありません。確かに、米軍駐留経費の負担比率は米国の同盟国の中で飛び抜けて高い。

 しかし、防衛費の対GDP比は1%前後に過ぎません。米国の3%強、英仏の2%前後と比べかなり低いのは事実です。これは以前から米国の安全保障関係者の不満の種でした。

 そして日米同盟が片務条約であることです。トランプ候補も指摘するように「米国は日本を守る義務があるが、日本に米国を守る義務はない」のです。こうした同盟に米国人の支持がいつまで続くかは怪しいのです。

 ことにこれから、中国による太平洋の軍事基地化を日米が力を合わせて防ごうという時なのですから。

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「中国の尻馬」にしがみつく韓国

2015年9月3日、朴槿恵大統領は中国・天安門の壇上にいた。米国の反対を振り切り、抗日戦勝70周年記念式典に出席した。

10月16日、オバマ大統領は、南シナ海の軍事基地化を進める中国をともに非難するよう朴大統領に求め、南シナ海に駆逐艦を送った。が、韓国は対中批判を避け、洞ヶ峠を決め込んだ。韓国は中国の「尻馬」にしがみつき、生きることを決意したのだ。

そんな中で浮上した「核武装」論。北朝鮮の核保有に備えつつ、米国の傘に頼れなくなる現実が、彼らを追い立てる。

静かに軋み始めた朝鮮半島を眼前に、日本はどうすべきか。目まぐるしい世界の構造変化を見据え、針路を定める時を迎えた。

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』に続く待望のシリーズ第7弾。12月15日発行。