
(前回から読む)
5月9日投票の韓国大統領選挙で、左派「共に民主党」の文在寅(ムン・ジェイン)候補の当選が確定し、準備期間を置かず直ちに大統領に就任した。北朝鮮の核武装を巡り、米朝の軍事的緊張が高まる中で「反米親北政権」がどう動くかが焦点となる。
「北との融和」唱える文在寅
文在寅氏は5月9日午後11時50分過ぎ、ソウルの中心部の光化門広場で「国民の念願する改革と統合という2つの課題すべてを果たす」と演説した。
文在寅大統領の勝利は、2期9年間続いた保守政権への幻滅が原動力となった。韓国では朴槿恵(パク・クンヘ)前大統領を弾劾する過程で、政府や財閥など「力を持つ者」への不満が噴出。「進歩・革新」を掲げる文在寅氏はその波に上手に乗った。
保守勢力は文在寅政権の登場を防ごうと、自由韓国党の洪準杓(ホン・ジュンピョ)氏に期待をつないだ。同候補は選挙終盤で支持を急速に伸ばしたが、及ばなかった(「韓国大統領候補の支持率の推移」参照)。

今後の展開を読むためのポイントは2つ。まずは外交だ。文在寅大統領は「当選したら米国よりも北朝鮮に先に行く」と語るなど「融和」を対北政策の柱に掲げる。
選挙の討論会でも「米国が対北軍事行動を起こそうとしたら、北朝鮮に連絡しその挑発を抑える」と述べ、「先制攻撃を北に通報するのか」と批判されたこともある(「米国に捨てられ、日本に八つ当たりの韓国」参照)。
警戒強める米国
米国も文在寅政権に警戒感を強める。「反米親北」で名をはせた盧武鉉(ノ・ムヒョン)大統領の盟友で、同政権(2003―2008年)では大統領秘書室長を歴任したからだ。
米議会が設立した自由アジア放送(RFA)は「北朝鮮、中国の代わりに韓国の新政府と密着可能性」(5月4日、韓国語版)で、北朝鮮が韓国の次期政権との経済協力を模索するとの専門家の予測を引用した。
CSISの中国専門家のグレーザー(Bonnie Glaser)中国学部長兼先任研究員が語ったもので、ポイントは以下だ。
- 米国の要請に応え、中国が北朝鮮への圧迫に乗り出したのは確かだ。ただ、まだ原油供給の中断などには乗り出してはいない。
- 北朝鮮が中国の役割の身代わりにロシアを選ぶのは容易ではない。しかし来週にもスタートするであろう、進歩的な傾向の強い韓国の次期政権との積極的な経済協力を通じ、北朝鮮は中国の圧迫に耐えることができるだろう。
- 韓国の新政権が新たな政策を打ち出し、より大きな経済支援に出るなど南北交流を活発化すると北朝鮮の指導者、金正恩は期待できる。
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