64%が「金正恩は信頼できる」

そんな見え透いた猿芝居に騙される人がいるのでしょうか。

鈴置:韓国人の71.4%が南北首脳会談の結果、CVID――「完全で検証可能で不可逆的な非核化」が可能になったと考えています。

 世論調査会社のリアル・メーターが5月2日に調べた結果です。「不可能」と答えた人は18.2%に留まりました。

 もし、米朝首脳会談が決裂すれば、韓国人の多くは「金正恩委員長は悪くない。問題児はトランプだ」と言い出すでしょう。

 同じリアル・メーターの調査では「金正恩氏を信頼する人」が会談前の14.7%から64.7%に急増しています(「『民族の祭典』に酔いしれた韓国人」)。

悪いのはトランプ

韓国ではそうかもしれません。でも、政治ショーの舞台の外では北朝鮮に非難が集まりませんか?

鈴置:この問題に理解が浅く、トランプ嫌いの多い欧州でも「米国が悪い」との声が起きるでしょう。日本だってそうです。その前兆を朝日新聞で観察できます。

 4月27日、トランプ大統領は「勇気づけられた」と南北首脳会談を評価する一方「過去の政権の過ちは繰り返されない。非核化されるまで最大限の圧力は続く」と北朝鮮を牽制しました。

 朝日新聞・東京本社版はこれを1面トップで報じましたが、見出しは以下の2本でした。

・「完全非核化」 米なお強硬
・南北会談「評価」でも圧力維持

 この見出しを見て「北朝鮮が完全な非核化を約束した。しかし米国はいまだに強硬策を捨てず、圧力を維持すると言っている」と認識した読者も多いことでしょう。

 そもそも北朝鮮は完全な非核化など約束していません。「非核化が目標」と言っているに過ぎないのです。その北朝鮮に対し圧力を加え続けるのは当然の話です。

 でも、朝日新聞はこの1面トップの記事により「トランプこそが平和を乱す悪い奴だ」とのイメージを日本に広めたのです。

 南北朝鮮は国際的な世論誘導に必死で取り組んでいます(「米国の空爆を防ごうと『時間稼ぎ』に出た南北朝鮮」参照)。

 5月7-8日、金正恩委員長は中国遼寧省・大連で習近平主席と会談し「非核化は一貫した立場」と述べました。北朝鮮は平和愛好国家であり、中国がその保証人になると宣伝したのです。

 5月9日には訪朝したポンペオ国務長官に、拘束中の3人の韓国系米国人を引き渡しました。米朝首脳会談が近づくに連れ、北朝鮮は宣伝攻勢にますます熱を入れるでしょう。

次回 に続く)

■訂正履歴

本文中「ステフェン」を「スティーブンス」に修正しました。本文は修正済みです。 [2018/5/14 18:30]

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孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録

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