TV朝鮮を廃業させろ!

保守系紙の奇妙な弱腰。この脅しに怯んだのですね。

鈴置:韓国のメディア関係者ではそう見る人が多い。ちょうど与党議員の不正疑惑報道に絡み、青瓦台(大統領府)が朝鮮日報系のテレビ「TV朝鮮」を存続させるべきか否かの検討に入ったところでした。

 聯合ニュースの「『TV朝鮮の許可取り消し』 青瓦台への請願 20万超す」(4月23日、韓国語版)によると「虚偽、誇張、ねつ造報道により、国民の知る権利を毀損するTV朝鮮の廃業を請願する人が1カ月で20万人を超えた。青瓦台は法律に基づき請願に回答することになった」というのです。

 保守派は、この20万人が政権の息のかかった20万人と見ていますが。

文在寅政権はどんな手を使ってでも、南北首脳会談や板門店宣言の怪しさを指摘されたくないのですね。

鈴置:首脳会談はすぐに透けて見える薄っぺらい台本を基に演じていますので、誰かが「猿芝居ではないか!」と叫んだらお終いなのです。ただ、国民の中にも「猿芝居とは思いたくない人」がいるのも事実です。

 韓国人なら、できれば「金正恩は本当はいい人なのだ」「彼は本気で核兵器を捨てる気だ」「平和が来る!」と信じたい。

 世論調査会社、リアルメーターが4月27日に「北朝鮮の非核化と平和定着の意思に関し、会談前と後で見方が変わったか」を聞きました

 会談前から「信頼していた人」は14.7%。それが会談後には64.7%に急増しました。一方、「信頼しない人」は78.3%から28.3%に激減しました。

 そんな読者を抱える新聞社は「南北首脳会談はペテンだ」と決めつけにくい。保守系紙の筆の甘さは自主規制からも来ていると思います。

「民族」が12回

甘い現実認識が広がれば、国益を毀損します。

鈴置:「民族の敵」のレッテルを貼られたくないとの懸念も、韓国メディアにはあると思います。植民地支配を受けたうえ、内戦で分裂したままの朝鮮半島では「民族」が極めて重要なキーワードです。

 民族主義が強すぎて戦争を起こしたと反省する日本人とは反対に、韓国人は「民族に対する忠誠心のない指導者が恥ずかしい歴史を作ってきた」と考えています。

 文在寅政権は今回の首脳会談を「民族の祭典」と位置付けた。「板門店宣言」は日本語ベースで約2000字。その中に「民族」という単語が12回、「同胞」は2回出てきます。

 南北首脳会談は民族の和解劇として演出されたのです。北朝鮮とスクラムを組んだ韓国はこの先、奈落の底に落ちるかもしれない。でも、今この瞬間は、人々は「民族の団結」に酔っていたい。

 そんな時、メディアが「猿芝居」と批判したら「民族の反逆者」の烙印を押されかねないのです。そして政権を批判するメディアを失った韓国という国は、どんどん北朝鮮側に寄って行くことでしょう。

次回に続く)

大好評シリーズ最新刊 好評発売中!
Amazon「朝鮮半島のエリアスタディ 」ランキング第1位獲得!
孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録