北朝鮮はまともな国家に

保守系紙も激しく、今回の首脳会談を批判したでしょうね。

鈴置:それが、そうでもないのです。中央日報の社説の見出しは「文在寅―金正恩、非核化の大長征の扉を開く」(4月28日、日本語版)。韓国語版も全く同じで、見出しから手放しで称賛したのです。

 本文を見ても今回の首脳会談に対する批判らしい批判はありません。「金正恩委員長から具体的な非核化発言を引き出せなかった」くらいです。それどころか、ハンギョレ同様、「北朝鮮がまっとうな国家の道を進んでいる」と書いたのです。

何よりも今回の会談で注目されるのは、北朝鮮が正常国家のイメージを得ることになったという点だ。

金正恩委員長は残忍な独裁者、狂ったロケットマンから、開放的で率直でユーモアもある合理的イメージを得ることになった。

双方の夫人までが同席した夕食会で北朝鮮は正常国家にさらに一歩近づいた。

峰打ちで叩く

 東亜日報の社説も見出しは「北『完全な非核化』 新しい歴史、初めのページを書いた」(4月28日、韓国語版)でした。

 見出しだけだと、左派系紙のハンギョレと変わりません。本文では「(板門店宣言の『非核化』が)国際社会が強調する『完全で検証可能で不可逆的な非核化(CVID)』であるかは分からない」などと批判はしました。

 ただ「板門店宣言」が時間稼ぎに使われるとの本質的な批判には踏み込みませんでした。急所は突かず、峰打ちで叩いている感じです。

 朝鮮日報の社説(4月28日、韓国語版)の見出しは「北の核は『米朝』に任せ、対北支援に本腰入れた南北首脳会談」と批判をにじませました。

 本文でも問題点は指摘しています。しかし「北の核廃棄に対し、本当に深い論議があったかは疑問だ」などと微温的な批判に留めました。これも峰打ちです。

 洪準杓代表が指摘した「偽装平和ショー」に関しては触れませんでした。韓国保守を代表するメディアを自負し、左派政権の国益毀損を舌鋒鋭く追及するのが朝鮮日報なのですが……。

独裁時代がよみがえった

韓国紙は激しい言葉を使ってののしることが普通なのに……。

鈴置:4月28日の東亜日報はもう1本、社説を載せました。「『政府発表を基に報道せよ』…『新報道指針』を下した放審委」(日本語版)です。以下が骨子です。

放送通信審議委員会(放審委)は4月27日、南北首脳会談の取材報道と関連して、「政府発表を基に報道せよ」という注意事項を発表した。客観性、出所明示、誤報訂正のための特別モニタリングを実施したいとしたうえで強調した内容である。

事後審議機関である放審委が言論の自由を萎縮させる事前介入の脅しをしたことになる。過去の独裁時代の「報道指針」の陰湿な亡霊がよみがえったようだ。

放審委の傲慢な措置は、自分たちが行う審議・制裁が3~5年ごとに行われる放送局の再許可承認のいかんに直結されることを意識したものである。

 

 朝鮮日報も同じ趣旨の社説「放審委、今や報道指針まで」(4月28日、韓国語版)を載せています。

 要は、文在寅政権が「南北首脳会談で気に入らない報道をしたら、免許を取り消すぞ」と放送局を脅したということです。

 韓国の保守系大手3紙は放送局を持っていて、収益の柱になりつつあります。政権は免許改廃という武器を振り回すことで放送局に加え、保守系大手紙も脅したのです。

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