南北首脳会談の様子を報じるソウル駅の街頭テレビに見入る人たち(写真:ロイター/アフロ)

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 韓国メディアは南北首脳会談を「民族の祭典」としてうたいあげた。批判は許されなかった。

平和を開く板門店宣言

4月27日に板門店で開かれた南北首脳会談。韓国紙の反応は?

鈴置:左派系紙は手放しで褒めあげました。ハンギョレの社説の見出しは「板門店の春、平和・繁栄の時代開く」(4月28日、日本語版)。韓国語版も全く同じです。

 ハンギョレは文在寅(ムン・ジェイン)政権に近く、北朝鮮との関係改善を重視する新聞です。日本語版からポイントを引用します。

両首脳は分断線を手を握って共に越え、また乗り越えた。全世界が見守る中で、予定になかったパフォーマンスを通じて分断を越えて平和と統一に進もうという南北の意志を明確に示してくれた。

両首脳は「板門店宣言」を通じて、朝鮮半島にこれ以上戦争のない新しい平和の時代が開かれたことを明らかにした。

今回の首脳会談は11年ぶりに再び開かれた南北首脳会談という意味を越え、朝鮮半島の平和定着に劇的な転換点となる事件として記録されるに値する。

 ……と、まずは「歴史的事件だった」と強調しました。次のくだりでは「金正恩(キム・ジョンウン)委員長が率直な人であり、北朝鮮を正常な国家へと導いている」と訴えました。

金委員長の夫人リ・ソルジュ女史が、晩餐で文大統領とその夫人のキム・ジョンスク女史と同席したことも正常な国家とする意志をはっきり示したものと言えるだろう。

金委員長は率直に破格の姿で登場した。文大統領と会った瞬間、軍事境界線を共に行き来したことからして破格的だった。金委員長が北の道路事情は良くないということを率直に打ち明けた姿も印象的だった。

実力以上の虚勢はなく、足りない点は足りない通り話すことができる姿は、信頼を植え付けることに役立つ。偽りのない姿ほど相手を信頼させるものはない。

信頼できる金正恩

金正恩氏が「いい人」に見えてきますね。

鈴置:北朝鮮は「非核化」の約束を何度も破ってきた。当然、金正恩委員長が何を約束しようが信用されません。それに対しハンギョレは「約束を破った祖父や父親とは異なるタイプの人物だ」と強調したのです。このくだりの後には、やはりというべきか、以下の文章が続きました。

焦眉の関心事であった朝鮮半島の非核化の点で両首脳は「完全な非核化を通じて核のない朝鮮半島を実現するという共同の目標を確認した」と発表した。

これまで北朝鮮は非核化の意志はないのではないかという話が出ていたが、今回の宣言を通じてこのような疑問ははっきりと払拭されることとなった。

 金正恩委員長は信頼できる。だから非核化の約束も信用できる――という論理展開になっているわけです。北と南の当局が仕組んだ「平和ショー」の筋書きをなぞったと言われても弁解できません。

 1つの証拠が「軍事境界線を手を握って共に越え、また乗り越える、予定になかったパフォーマンス」という部分です。

 普通の記者なら「このパフォーマンスは予定になかったと政府は言うが、予め発表しなかっただけだろう。そちらの方が驚きを持って迎えられ『平和ショー』が引き立つからだ」と考えます。でも、ハンギョレは「予定になかった」と政府発表そのままに書いたのです。