だから北朝鮮の「核実験などの中止」宣言というペテンに対しても、トランプ大統領は「歓迎する」とツイートしたのです。

 北朝鮮はいまだ、正式には米朝首脳会談に応じるとは表明していません。ペテンだろうと偽装平和だろうと「ポツダム宣言」通告の場である首脳会談の開催に北朝鮮が前向きの姿勢を示せば、米国が大歓迎するのは当たり前なのです。

会談を拒否すれば……

「究極の2択」を避けるため、北朝鮮は米国との首脳会談に応じないのではありませんか。

鈴置:その際は米国からの圧迫が続きます。トランプ大統領は安倍晋三首相との4月17日の会談後に、以下のように語りました。ホワイトハウスのサイトから引用します。

・ It’s possible things won’t go well and we won’t have the meetings, and we’ll just continue to go along this very strong path that we’ve taken. But we will see what happens.

 「米朝会談はうまくいかないかもしれないし、開かれないかもしれない。そんな時はこれまで採ってきた強力な方向を続けるだけだ」と言ったのです。

 文在寅政権は、米国から圧迫を受ける金正恩政権を助けるつもりで、結果的にワナにはめてしまったのです。一方、米国からすれば、裏切り者の文在寅政権を使って金正恩氏を対話の場に引き出すことに成功したのです。

 韓国とは別に、米国も独自ルートで北朝鮮に首脳会談を呼びかけていた。ただ、韓国に米朝首脳会談を仲介する形をとらせれば、北朝鮮は応じる可能性が増します。韓国を味方に付けて米国との交渉に臨めると北が考えるからです。

タッグを組んだ米中

米国VS南北朝鮮の構図ですね。

鈴置:より正確に言えば、米中VS南北の構図です。米中はタッグを組んでいるのです。

 「米中が北朝鮮包囲網を作ったな」と関係者が実感したのが2017年12月12日のティラーソン(Rex Tillerson)国務長官(当時)のアトランティック・カウンシルでの演説でした。

 司会者から「『圧力をかけ過ぎると北朝鮮が崩壊し、難民が押しかけて来る』と中国は懸念していないか」と聞かれたティラーソン長官は「その問題に関しては、米中の外相と国防相ら高官協議の場で緊密に連絡を採っている」と答えました。

・And one of the real values of these new high-level dialogues and the diplomatic and strategic dialogue that Secretary Mattis and I chair with our counterparts, and we actually have included Joint Chief of Staff Chairman Dunford, General Dunford, and his counterparts from China as well.

 さらに「中国は難民問題への準備を進めており、上手に処理するだろう」と語った後、驚くべき発言が飛び出したのです。以下です。

・ We have had conversations that if something happened and we had to go across a line, we have given the Chinese assurances we would go back and retreat back to the south of the 38th parallel when whatever the conditions that caused that to happen. That is our commitment we made to them.

 「何かが起きた時、我々(米軍)は南北の軍事境界線を越えざるを得ない。これに関しては中国と話し合い済みであり、我々は状況により38度線の南に引き上げると中国に保証している」と語ったのです。

「金正恩後」を堂々と話し合う

米中は金正恩体制崩壊後の軍事行動について密約を交わしているのですね。

鈴置:その通りです。当然、翌日の中国外交部の会見で「北朝鮮崩壊後に関する米中密約」に関し質問が出ました。

 何と、中国の報道官はティラーソン発言を否定しませんでした。肯定もしませんでしたが、否定しなかったことで暗に肯定したと受け止められたのです。

 「Foreign Ministry Spokesperson Lu Kang's Regular Press Conference on December 13, 2017」(12月13日、英語)で報道官は以下のように答えました。

・ I have no idea about what was referred to by the US side, but I would like to reiterate that China’s position on the Korean Peninsula nuclear issue remains unequivocal.

 「米国側が言及したことに何の意見もない」と言い放ったのです。これを読んだ北朝鮮はすくみあがったことでしょう。

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