まず非核化、見返りはその後

米国は北朝鮮を追い詰める場として首脳会談を使うのですね。

鈴置:その通りです。米国は「四の五の言わずにまず、非核化せよ」と命じる方針です(「『文在寅の仲人口』を危ぶむ韓国の保守」参照)。

 国務長官に指名されたポンペオ(Mike Pompeo)CIA長官も4月12日、上院の公聴会で「大統領と政府は北朝鮮に見返りを与える前に、我々が望む恒久的で不可逆的な成果を得るつもりだ」と語っています。

  • It is the intention of the president and the administration not to do that this time, to make sure that ... before we provide rewards, we get the outcome permanently, irreversibly, that it is that we hope to achieve.

 北朝鮮が完全に非核化するまで何の反対給付も与えない、と宣言したのです。VOAの「Pompeo: No Reward for N. Korea Without Irreversible Denuclearization」(4月12日、英語版)が伝えました。

 ホワイトハウスもポンペオ氏の発言の抜粋「Excerpts from CIA Director Pompeo’s Prepared Remarks」をわざわざ作って、サイトに載せました。ポイントは以下です。

  • I have read the CIA histories of previous negotiations with the North Koreans, and am confident that we will not repeat the mistakes of the past. President Trump isn’t one to play games at the negotiating table‐and I won’t be either.

 「(米国がまず譲歩して北朝鮮に援助を与えた)過去の米朝交渉を私は研究した。我々はそんな過ちは繰り返さない。トランプ大統領はいい加減な交渉をする人ではないし、私もそうだ」とポンペオ氏は言い切りました。

 米国をはじめとする国際社会は北朝鮮に騙され続けてきました。「もう、その手は食わないぞ」と米政府は北にしっかりと言い渡したのです。

化学兵器は北朝鮮も使った

4月14日のシリアへの攻撃は北朝鮮情勢にどう影響しますか?

鈴置:米軍は英・仏軍とともにシリアの化学兵器関連施設を空爆。米政府は「市民に化学兵器を使ったアサド政権への警告である」と説明しました。

 北朝鮮に対し、大いなる威嚇となったはずです。北朝鮮や韓国の親北派の間には「トランプは全ての選択肢がテーブルの上にあると脅すが、どうせ口先だけ。軍事行動には出まい」といった空気もありました。

 約束を破ろうが、外国人を拉致しようが、テロを実行しようが、北朝鮮が軍事的制裁を受けたことはなかったからです。

 しかし、トランプ政権はシリア攻撃で「やるべき時は必ずやる」と示した。北朝鮮の指導部は「空爆の次の対象は我々かもしれない」と焦っていると思います。

 シリア空爆でもう1つ注目すべきは、化学兵器の使用がその理由だったことです。化学兵器と言えば北朝鮮も同罪です。2017年2月13日、金正恩委員長の異母兄の金正男(キム・ジョンナム)氏がマレーシアの空港で化学兵器を使って殺されました。

 北朝鮮政府は否定しましたが、マレーシア政府はこの暗殺に北朝鮮の大使館員らが関わっていたとして4人の北朝鮮国籍の容疑者の引き渡しを要求しました(「弾道弾と暗殺で一気に進む『北爆時計』の針」参照)。

 ロシアだって化学兵器を使った元スパイ暗殺未遂事件に絡み、欧米から外交官追放など厳しい制裁を受けている。北朝鮮だけが化学兵器を使っても糾弾の対象になってこなかったのです。

 他にあまりの多くの大罪をおかしているため「北朝鮮の化学兵器」は目立たなかった。が、シリア空爆で世界は「北朝鮮も化学兵器の使用国だ」と思い出したでしょう。