韓国版プラザ合意

 韓国経済新聞は「FTAに続いて為替も米国に譲歩?『韓国版プラザ合意』懸念高まる」(3月30日、日本語版)で「これこそ、円とマルクを強引に切り上げさせたプラザ合意のウォン版だ」と悲鳴をあげました。

 異様な合意です。「プラザ」のように、為替の問題は多国間で取り決めるのが普通です。というのになんと今回、米国は韓国に2国間の取り決めで「為替操作しない」と約束させたのですから。

 いずれにせよ、これでウォン高基調となり、それが続けば韓国は通貨危機に直面する可能性が出てきました。

 ウォンの対ドルレートは3月の最終週から上昇に転じています。金正恩委員長の訪中説(3月27日)、中朝首脳会談の正式発表(3月28日)、米政府の「為替操作禁止」の発表(3月28日)、南北首脳会談の開催日決定(3月29日)などウォン高要因が相次いだからです。

 そこに3月29日のトランプ大統領の威嚇発言。これを受け、4月に入ってもウォン高傾向が続いています。

ウォンの対ドルレート

半導体輸出にも暗雲

通貨高により通貨危機が起きるというのも変な気がします。

鈴置:韓国の場合、1997年、2008年、2010年にそれが起きました。ウォン高などが原因で貿易収支が赤字化すると、あるいは黒字でもその幅が減少すると、通貨危機の恐れから資本逃避が発生したのです(「韓国が脅える『政権末期の通貨危機』」参照)。

 債務国の悲哀でした。韓国は近年、債権国に転じましたが、資本の蓄積がまだ薄く資本に逃げられやすい。

 それに、これから本格化するであろうウォン高は、ウォンが買われて――つまりドルが流入してのウォン高ではありません。韓国政府がウォン安誘導を禁じられた結果としての、筋の悪い通貨高なのです。「ウォン高に続く資本逃避」が起こっても不思議ではありません。

 そもそもドルの利上げ局面に突入しています。すでに韓国は資本逃避が発生しかねない状況に突入していたのです(「米国はいつ『韓国放棄カード』を切るのか」参照)。

 それに為替要因以外でも、輸出が減少する可能性が高まっています。まずは米韓FTAの改定に伴い、韓国の鉄鋼輸出に歯止めがかけられたこと。

 さらには米中貿易摩擦が激化する中で、中国が一部の半導体の輸入先を韓国から米国にシフトすると決めたとされることです。半導体の輸出が全体の15%前後を占める韓国にとって大打撃となります。

 貿易黒字が減れば韓国の格付けが下がる可能性が増し、資本逃避の狼煙になりかねないのです。世界の有力格付け会社のほとんどが米国の会社ですしね。