トランプ大統領は3月29日のオハイオ州での演説で、韓国を威嚇した。(写真:UPI/アフロ)

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 非核化を巡り、韓国が中国・北朝鮮側に寝返った。怒った米国は経済を武器に韓国を圧迫する。

FTAで韓国を脅す

鈴置:トランプ(Donald Trump)大統領が文在寅(ムン・ジェイン)大統領を公然と脅しました。

 3月29日のオハイオ州での演説で、大筋合意していた韓国とのFTA(自由貿易協定)改定交渉について「(非核化に関する)北朝鮮との取引が成立するまで棚上げするかもしれない」と語ったのです。

 ホワイトハウスの「Remarks by President Trump on the Infrastructure Initiative」(3月30日)で発言全文を読めます。ポイントは以下です。

  • I may hold it up until after a deal is made with North Korea.
  • Because it’s a very strong card, and I want to make sure everyone is treated fairly and we’re moving along very nicely with North Korea.

 トランプ大統領は「それ(FTA改定)はとても強力な(韓国との交渉)カードだ。誰もが公正に扱われるべきだし、我々は北朝鮮と上手くやっていくだろう」とも語りました。

 要は北朝鮮との非核化交渉を念頭に、韓国を脅すムチとしてFTA改定交渉を今後も活用する、と言ったのです。

時間稼ぎに協力する韓国

北朝鮮との交渉で成功するために、なぜ韓国を脅す必要があるのですか?

鈴置:韓国が米国を裏切って北朝鮮を応援し始めたからです。3月末の中朝首脳会談で両国は「段階的な非核化」で合意しました。

 厳密に言うと、会談の場で「段階的で同時的な措置が非核化問題を解決する」と語ったのは金正恩(キム・ジョンウン)委員長でした。

 ただ、新華社が発言をそのまま伝えたので中国も「段階的な解決」を支持したと見なされました。人民網の「習近平同金正恩挙行会談」(3月28日、中国語版)で読めます。

 「段階的な解決」はトランプ政権がもっとも警戒する北朝鮮の手口です。1993年以降、北朝鮮は何度も小出しに譲歩するフリをしては米国の軍事的な圧迫や経済制裁を緩和させたあげく、最後には非核化の約束を破ってきました。

 トランプ政権はそんな時間稼ぎを許すつもりはありません。北朝鮮に完全に核を廃棄させる「一括妥結」方式で解決する方針です。

 文在寅大統領もトランプ大統領との3月16日の電話協議で「過去の失敗に起因する憂慮に徹底的に備えたい」と語り「一括妥結」で米国と足並みをそろえると表明していたのです。

 文在寅大統領のこの発言は朝鮮日報の(「『ゴルディウスの結び目を断ち切る非核化』と言っていたのに……中朝会談後、後退の兆し」(3月30日、韓国語版)などが報じました。

 ところがその韓国が突然に態度を変え「段階的な解決」を言い始めたのです。北朝鮮側に回り、一緒になって米国を封じこみ始めたわけです。

 このままだと4月27日の南北首脳会談で「段階的な解決」が合意され、5月末に開く予定の米朝首脳会談までに、中国やロシアも加わってそうした流れを作られかねない。これはまずいと考えた米国は、韓国を抑え込みにかかったのです。