北朝鮮の要人が訪中か。北京は厳戒態勢(写真:AFP/アフロ)

前回から読む)

 3月26日、金正恩(キム・ジョンウン)委員長か、その妹の金与正(キム・ヨジョン)朝鮮労働党第1副部長が訪中した模様だ。

お召列車に乗れるのは一家だけ

鈴置:北朝鮮の特別列車が同日午後、中国遼寧省・丹東を経由し、北京に到着しました。人民大会堂周辺は「元首級を迎える」特別な警戒態勢が敷かれました(日経・電子版「北朝鮮要人が訪中か」参照)

 3月27日午前までに中国、北朝鮮のいずれの政府もこうした動きについて何の説明もしていません。しかしこの特別列車は北朝鮮の歴代の最高指導者が訪中あるいは訪露する際に使うものです。「お召列車」なのです。乗っているのは金正恩委員長か金与正・第1副部長の可能性が極めて大きい。

 金与正氏は平昌(ピョンチャン)冬季五輪の参観を名目に訪韓しています(「北より先に韓国に『鼻血作戦』を発動する米国」参照)。兄、金正恩委員長からの信頼は相当に篤いと思われます。

蚊帳の外の中国

兄か妹か分からないにせよ、金ファミリーの訪中の目的は何でしょう?

鈴置:4月末に予定される南北首脳会談と、5月末に開催とされる米朝首脳会談を控え、中国に意図を説明するためでしょう。

 中国は北朝鮮が一気に米国側に寝返るのではないか、と恐れています。「ミャンマー化」です。中国共産党の英文対外宣伝紙「Global Times」が米朝首脳会談に露骨な警戒感を表明していました。

 3月18日の「Nothing should come between China and North Korea」です。

 この記事は冒頭で「北朝鮮の核問題を巡り韓国と日本、西欧のメディアが国際世論の流れを作るようになった」と主張。

 さらに「中朝両国にとって重要なのは、核問題に関して意見の違いはあっても良好な関係を維持することであり、韓、日、西欧のメディアの影響力を断ち切ることである」と訴えました。

  • The North Korean nuclear crisis has placed Pyongyang under the spotlight of global public opinion, which is basically dominated by information from South Korean, Japanese and Western media.
  • For China and North Korea, the major tests are how to keep the right balance between their divergences over the nuclear issue, how to maintain friendly ties between Beijing and Pyongyang and how to avoid the influence of South Korean, Japanese or Western media.

 要は「南北」「米朝」の両首脳会談の開催が決まるなど、朝鮮半島が激変し始めた。しかるに中国は完全に蚊帳の外にいる。中国にとってこれはまずい、との主張です。

 ただ「我が国は外交的にのけ者にされている」と露骨に書けば、中国共産党批判になってしまう。そこで「中国以外の国のメディアの影響力が増した」とオブラートに包んだと思われます。