韓国人の本音

最大手紙の朝鮮日報は「THAAD」に関し、何か意見を表明しているのですか。

鈴置:3月5日の社説「準備せずに『統一の夢』は実現できない」でチラリと触れました。

  • 民族と国の運命を決める「北の核」の解決は、我々独自の意思だけでは限界があると痛感する。結局、国連が前に出ねばならず、米国と中国の取引を通じ、対北制裁とTHAAD配備問題が処理される過程を見守らねばならないのだ。

 現状認識を述べただけです。この問題で韓国が具体的にどう動くべきだとは主張してはいません。でも、同紙のシニア記者は署名記事で「米中間の立ち位置」に関し言及し始めました。

 3月9日、鮮于鉦(ソンウ・ジョン)論説委員が「活火山の火口役は避けるべきだ」(韓国語版)を書きました。韓国人の本音を吐露した記事なので、長くなりますがポイントを翻訳します。

ずる賢さが必要だ

  • 韓国にとって米国は「血盟」だ。3万6574人の米軍将兵が朝鮮半島で命を落とした。北朝鮮との軍備競争を避け、繁栄を享受できるのも在韓米軍のおかげだ。借りを返すにはほど遠い。とはいえ、いざこざの身代わりまで買って出ることはできない。
  • 同盟の限界はどこにあるのだろうか。韓米同盟の本質から明確にすべきだ。米国が、中ロを相手にする際に「パートナー」と規定している国は日本だ。韓国は北朝鮮を抑える「地域パートナー」との立場を越えたことはない。従って、アジアで米中間のいざこざの身代わりを進んで買って出る資格と責任は、日本にある。
  • 3月8日、韓国政府が北朝鮮制裁を発表した。開城工業団地の稼働中止を含め、取り得る圧迫手段はすべて動員した。残るはしっかりと履行することだけだ。
  • 同時に、韓国政府の対策の中に、過剰反応な部分がないかもチェックしなければならない。表に出さず静かにやるべき重要な課題も選別し、推し進めなければならない。
  • 指導者には、時としてずる賢さも必要になる。それでこそ「活火山の火口」役を避けることができる。

 米韓同盟を「対北朝鮮用」に明確に限定すればよい、との主張です。THAAD問題を期に韓国は中国からの圧迫と、米国から見捨てられる危険性に同時にさらされました。

 いずれからも逃れるには同盟の範囲を限って「中国を敵にしない」と宣言するしかない、との論理です。これは朴槿恵政権が当初から目指していたことです。米中間で迷走を始めた政権に、原点回帰を訴えているとも言えます。

 なお「過剰反応をチェック」とは、THAAD配備容認の見直しを含め、対中関係の改善に動こう――ということと思われます。「表に出さず処理する課題」とは、核武装の準備を密かに進めよう、との意味に受け取れます。

「やっつけられる日本」を見たい

「中国に立ち向かう役割は日本にやらせよう」とも言っていますね。

鈴置:自分が中国に敵対しないだけではなく、日本を中国に敵対させる。そうすれば、より確実に中国との良好な関係を維持できる――との計算です。

 国際政治の常道として、隣国が強力になり脅威を感じた際に採る道は2つあります。強大な隣国に立ち向かうか、あるいはその侵略の方向を自分以外の国に向けさせるかです。

 ナチス・ドイツが台頭した時、フランスとソ連はお互いをドイツと仲違いさせようとしました。ドイツの自分への怒りを逸らそうとしたのです(「コリア・アズ・No.1」参照)。鮮于鉦・論説委員はまさに、この手を使おう、と言っているのです。

 感情的にも「日本をして中国に立ち向かわせる」作戦は、韓国人にとって心躍るものがあります。要は「中国が日本を攻撃するのを高みから見物しよう」ということですから。

 尖閣で中国が日本を圧迫するニュースを報じる時の韓国メディアは、実に楽しそうです。憎い日本がやっつけられるのを見るのは、韓国人にとって最高のショーなのです。それが将来、どんな不幸となって自分にやってこようと、です(「『尖閣で中国完勝』と読んだ韓国の誤算」参照)。