一時は強気を見せた東亜日報も……

ほかのメディアは「THAADで悪化した中国との関係」をどう評しているのですか。

鈴置:多くの新聞が懸念し始めました。中でも、東亜日報の変節が興味深いのです。

 東亜日報はTHAAD配備のための米韓合同実務協議団が発足した翌日の3月5日の社説「北の核先制攻撃の脅威……THAAD含む緊急対応が必要だ」(3月5日、韓国語版)で、諸手を上げて賛成しました。

 日本語版でも「金正恩氏の核恐喝にTHAAD含む対応が必要だ」(3月5日)で読めます。中国に対しても、以下のように強気でした。韓国語版を翻訳します。

  • 中国が頑なに反対したため、韓米の実務団発足に関する協議がしばらく停滞した。THAADが困ると言うのなら、中国は金正恩を説得するなり、圧迫するなりして核を放棄させれば済むことだ。

 中国の顔色をうかがう中央日報と比べ、気合いが入っているなあと感心したのですが、それは4日後に裏切られてしまいました。

 社説「独自制裁に出た韓国、米中の水面下の駆け引きに不覚を取ってはならない」(3月9日、日本語版)で、東亜日報は大きく軌道修正したからです。ポイントは以下です。

米中の本心を見落とし不覚

  • 米国務省のカービー(John Kirby)報道官は3月7日「米国は6カ国協議の再開を望み、完全かつ検証可能な非核化を望む」と強調した。THAAD配備に関しても「韓国との協議の必要がなくなる可能性もある」と述べた。
  • 米中が安保理決議と配備の保留を巡って、ある種の戦略的駆け引きをしており、非核化会談再開の方向へ局面転換を模索しているようだ。中国の「非核化・平和協定の並行」提案に米国は以前と異なって柔軟だ。
  • 制裁と圧迫だけで金正恩第1書記に核とミサイルを放棄させられるかは不確実だ。特に、北朝鮮政策の目標を金正恩政権の交代と崩壊、統一まで見通す圧迫に置くのかについては、韓米間に意見の相違があり得る。
  • 米中の本心を看破できず不覚を取ることがないよう、出口戦略も考慮し戦略、戦術的柔軟性を発揮しなければならない。

 東亜日報も米中の談合に警戒してはいたのです(「朴槿恵外交は『暴走』から『迷走』へ」参照)。

 でも、3月4日にTHAAD配備に向け実務協議が始まったので、米韓の結束は固いと読み誤り、翌日の社説で中国に「俺の後ろには米国がいるぞ」と凄んでみせてしまったと思われます。

 そこに3月7日のカービー報道官の発言。「米国がスクラムを組んでいるのは自分ではなく、中国だった」と気がついて、慌てて論調を変えたのでしょう。