「判断の根拠は?」

条件がすっぽり落ちていますね。

鈴置:だから「米朝会談、3つのシナリオ」で「トランプ大統領が『北朝鮮が全面的な非核化に向け大きく動き出した』と理解――誤解したフシがある」「韓国の仲人口」などと指摘したのです。

 韓国の特使がトランプ大統領に会う前から「金正恩の言う非核化とは何か」が焦点でした。朝鮮日報の姜仁仙(カン・インソン)ワシントン特派員が特使の1人、徐薫(ソ・フン)国家情報院院長にこの点を問い質しています。

 3月8日、特使団がソウルからワシントンに向かう飛行機に同乗し、機中で単独会見したのです。「金正恩は年内に核と平和体制で大筋にメドを付けるつもり」(3月10日、韓国語版)のうち、関連する一問一答の部分を翻訳します。

(質問)金正恩が特使団に語った「非核化」とは「核開発の凍結」や「核不拡散」ではない、本当の非核化だと言うのか。

「そうでないなら我々(韓国の特使団)が受け入れるわけがない。金正恩委員長が直接、非核化を約束したことに意味を見いださねばならない」

(質問)金正恩が本当に、心からの非核化の意思を語ったという判断の根拠は?

「こういう仕事をする際には、相手の意思を持ってして判断はしない。相手が語った言葉の中から意味あることを引き出して実践できるよう形を成していくことが重要である」

万暦帝に処刑された沈惟敬

「金正恩は本気で非核化するつもりだ」との韓国政府の説明には、さしたる根拠もないのですね?

鈴置:そうなのです。徐薫・国情院長が正直に語ったように「韓国側が北朝鮮を非核化に誘導したい」ということに過ぎないのです。徐薫氏が言葉を濁しているところから見て、金正恩委員長は「非核化」という言葉さえ使わなかった可能性があります。

 北朝鮮との交渉に長らく携わった韓国保守の長老、李東馥(イ・トンボク)氏も、特使団の「仲人口」を厳しく批判しました。趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムに載せた「沈惟敬の末路をたどる文在寅の北核特使外交」(3月10日、韓国語)がそれです。

 見出しの「沈惟敬」は文禄慶長の役当時の明の対日交渉使節。日本と明の双方を偽って和解工作を進めたものの結局は露見、万暦帝により処刑されました。