
(前回から読む)
米朝首脳会談がもたらすのは平和か、それとも戦争か――。
「非核化」発言は本物か
鈴置:金正恩(キム・ジョンウン)委員長は本当に「非核化する」と言ったのだろうか――。韓国政府の説明を疑う人が出てきました。
トランプ大統領を北朝鮮との対話に引き出すため、文在寅政権が「仲人口」(なこうどぐち)――縁談をまとめようと仲人が双方に都合のいい話をする――を駆使する様子が垣間見えるからです。
3月5日に特使として北朝鮮を訪問し、金正恩委員長と会談した鄭義溶(チョン・ウィヨン)青瓦台(大統領府)国家安保室長。平壌(ピョンヤン)から戻った翌3月6日、訪朝結果を箇条書きにしてブリーフしました。
青瓦台の「鄭義溶首席特使の訪朝結果 言論発表」(3月6日、韓国語、動画付き)からポイントを翻訳します。
- 南北は4月末に板門店の(韓国側の)平和の家で第3回南北首脳会談を開くことにした。
- 南北は軍事的な緊張の緩和と緊密な協議のため、首脳間のホットラインを開設することに合意した。
- 北側は朝鮮半島の非核化の意思を明らかにし、北に対する軍事的な脅威が解消し、北朝鮮の体制安定が保証されるなら核を保有する理由がないとの点を明らかにした。
- 北側は、非核化問題の協議と北・米関係正常化のため、米国と虚心坦懐に対話する用意があると表明した。
- 対話が続く間は、北側は追加の核実験と弾道ミサイルの試射など戦略的な挑発の再開はしないことを明らかにした。同時に核兵器はもちろん、在来型の兵器も南側に使わないことを確約した。
- (略)
消えた条件
「非核化」は③で言及されましたが「北に対する軍事的な脅威が解消し、北朝鮮の体制安定が保証されるなら」と条件が付いています。
こうした前提付きの主張は前から北朝鮮が表明してきたことです。「非核化を約束」と報じるほどのニュースではありません。だからメディアも見出しは他からとった。例えば日経新聞の3月7日付朝刊の見出しは以下の4本です。
- 南北首脳 来月末に会談
- 非核化へ「米と対話」
- 北朝鮮 ミサイル発射凍結
- 韓国側発表
しかし3月8日、鄭義溶・室長はワシントンでトランプ大統領に「北に対する軍事的な脅威が解消し、北朝鮮の体制安定が保証されるなら」との条件を省いて「金正恩は非核化を約束した」と語った模様です。
なぜなら、トランプ大統領と会った直後、鄭義溶・室長は会見(3月8日、英語)でこう述べたからです。
- I told President Trump that, in our meeting, North Korean leader Kim Jong-un said he is committed to denuclearization.
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