巨人たちのバスケットボール

 保守論壇の本流中の本流とされる、朝鮮日報の楊相勲(ヤン・サンフン)論説主幹も、コラム「THAAD問題はそんなに簡単ではない」(2月25日、韓国語版)で、似た例え話を使いました。以下をご覧下さい。

  • 最近、米中という背の高い人たちがTHAAD問題に関し、我々の頭の上でバスケットボールを回し始めた。米中のやり取りの結果、韓国配備がなくなることもあれば、配備の後に我々が想像した以上の暴風が吹き荒れることもあろう。
  • 我々が行く道の先に安全保障に関しどんな得失があるのか、可能な限り中長期的な視点で状況を見極めねばならない。たとえ背は低くとも、発想だけは背の高い人の上にいなければならない。そして、冷静に、冷静に、また冷静でなければならないのだ。

 ボス交渉が始まった。結論はまだ、分からない。軽挙妄動せず、その行方を見極めよう――との呼びかけです。楊相勲・論説主幹も「状況を見守ろう」と訴えるしかないのです。

「離米従中」に歯止めかからず

韓国がTHAAD配備を認めたので、「離米従中」をやめて米国側に戻ったのかと考えていました。

鈴置:日本の外交関係者の間でもそう思い込んでいる人が多い。韓国人が「親中外交はやめた」などと言ってくることもあるのでしょう。でも、楊相勲・論説主幹の記事の見出しではありませんが「問題はそんなに簡単ではない」のです。

 今回、韓国は米国から強く命じられたので、THAAD配備を受け入れました。今後、米国が「配備はやめた」と言い出せば、恥ずかしい思いをしながらもそれに同意するしかない。

 反対にTHAADを配備したら中国からひどく苛められるでしょう。楊相勲・論説主幹の言う「暴風が吹き荒れる」はそれを指します。そのあげく韓国は海洋勢力側から引きはがされ、今まで以上に大陸側に引き込まれる可能性も高い。

 もう、韓国人は、自らの意思によって自分の国の針路を決められません。米中どちらかが大声で叱りつけるたびに、反射的に動いているだけなのです。

 これまで韓国は米国を離れ中国側に向かって暴走していた。暴走とはいえ、そこにはなにがしかの意思は働いていた。しかしここに至りついに、意志とは関係なく迷走し始めた――と見るべきでしょう。

日本の頭上のボール

なぜ、韓国は自分の運命に関与できないのでしょうか。

鈴置:対立を深めた米中が、血相を変えて外交ゲームに取り組み始めたからです。横綱のような米中がガプリ四つに組めば、前頭級の国の出る幕はなくなります。

 北朝鮮の核問題も深刻になるほどに、解決には相当の軍事力と、国民の我が身を削る覚悟が必要になります。でも、韓国はいずれも持たないのです。

日本はどう動けばいいのですか。

鈴置:「韓国外し」は人ごとではありません。東アジアの安全保障の構造変化に関与できないという意味では日本も、韓国と似た境遇にあるのです。

 日本人も、頭の上で飛び交うボールの行方から目を離してはなりません。ひょっとするとボールを瞬時でも、少しでもコントロールするチャンスが来るかもしれない。その時に備えるべきです。

次回に続く)

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「中国の尻馬」にしがみつく韓国

2015年9月3日、朴槿恵大統領は中国・天安門の壇上にいた。米国の反対を振り切り、抗日戦勝70周年記念式典に出席した。

10月16日、オバマ大統領は、南シナ海の軍事基地化を進める中国をともに非難するよう朴大統領に求め、南シナ海に駆逐艦を送った。が、韓国は対中批判を避け、洞ヶ峠を決め込んだ。韓国は中国の「尻馬」にしがみつき、生きることを決意したのだ。

そんな中で浮上した「核武装」論。北朝鮮の核保有に備えつつ、米国の傘に頼れなくなる現実が、彼らを追い立てる。

静かに軋み始めた朝鮮半島を眼前に、日本はどうすべきか。目まぐるしい世界の構造変化を見据え、針路を定める時を迎えた。

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』に続く待望のシリーズ第7弾。12月15日発行。