電池で報復?

なぜ、抗議したことにしてしまったのでしょうか。

鈴置:そうでもしておかないと国民の腹の虫がおさまらなかったからでしょう。韓国社会でメディアは事実を伝えることよりも、人々の情緒を――喜怒哀楽をかき立てる役割を担っています。

それにしてもこの、国を挙げての反発ぶりは異様です。

鈴置:「中国が報復してくる」と韓国人が疑心暗鬼に陥っていたこともあります。そこに大使の「関係破壊」発言。「やっぱり、報復されるのだ!」との恐怖が広がったのです。自縄自縛です。

 韓国紙が初めて「THAADの報復」と具体例を挙げて書いたのは「電池」分野でした。韓国経済新聞が1月31日に以下のように報じました。

  • 中国政府が、リン酸鉄リチウム(LFP)方式のバッテリーを採用したバスにだけ補助金を出すことを決めた。
  • これにより、別方式のバッテリーを生産する工場を中国に建設したばかりのLG化学とサムスンSDIは大損害を受ける。
  • 解決は容易ではなさそうだ。一部では中国側の行動が韓国のTHAADの配備の動きが影響した可能性を憂慮している。

 中央日報の日本語版サイトに「<韓国の牽制に出た中国>中国、WTO・FTA規定を無視」(2月1日)の見出しで翻訳されています。

「朴槿恵の失態」暴く左派系紙

 1月6日の北朝鮮の4回目の核実験を受けて、朴槿恵大統領は1月13日に国民向け談話を発表しました。その中で、THAAD配備に関し「安保・国益に基づき検討する」と語りました。

 中国から「配備を絶対に認めるな」と命じられていたのに、韓国はここで配備容認の方向に転じたのです。

 「電池事件」はその直後に起きたので、韓国政府はTHAADとくっつけて記者に説明したのでしょう。ただ、本当に関係するのかは分かりません。韓国側の思い過ごしの可能性もあります。

 2月7日午前、北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射しました。その5時間後に韓国国防部が記者会見して「THAADの在韓米軍への配備に関し、韓米両国は公式協議に入る」と発表しました。大統領の「検討」からさらに一歩、踏み込んだのです。

 すると、中国外交部は直ちに駐中韓国大使を呼び「THAAD配備容認」に抗議しました(「 『THAADは核攻撃の対象』と韓国を脅す中国」参照)。

 これ以降「中国がこうして報復して来るはずだ」との予測記事が韓国紙に載るようになりました。左派系紙の記事からは「朴槿恵政権の外交上の失態」を強調する意図も感じられます。