
(前回から読む)
米国と日本の制止を振り切って北朝鮮を助ける韓国。米国がお仕置きに乗り出した。
同盟国なのに「狙い撃ち」
鈴置:韓国で「米国の報復が始まった。文在寅(ムン・ジェイン)政権が北朝鮮の言いなりになったからだ」と騒ぎになっています。
2月16日、鉄鋼とアルミニウムの輸入増加が安全保障上の脅威になっているとして、米商務省がトランプ(Donald Trump)大統領に輸入制限を提案しました。
日本を含む世界では、中国を標的とした輸入規制と見なされました。が、韓国人は自分たちが米国に狙い撃ちされたと考えたのです。保守系各紙は文在寅政権の北朝鮮への幇助政策が、通商分野での報復をもたらしたと怒気を込めて指摘しました。
東亜日報の社説「米、今度は鉄鋼関税爆弾……いつまで遅れて対応するのか」(2月19日、日本語版)の骨子が以下です。
- 米商務省の案は、すべての国の鉄鋼製品に一律に少なくとも24%の関税を追加するか、韓国、中国を含む12カ国に対して少なくとも53%の関税を追加で課す案など、3つの案が含まれている。トランプ大統領はこれをもとに、4月11日までに決定を下す。
- 選択肢の1つとして示された特定国への制裁案で、対米鉄鋼輸出首位のカナダと隣接国のメキシコ、友邦である日本やドイツなどが除外される一方、韓国が含まれたことに注目する必要がある。
- 韓国の鉄鋼メーカーが中国製鋼板を加工し、米国に安価で輸出したという米企業の認識が反映されているのかもしれない。韓米FTA(自由貿易協定)の改正交渉で有利な立場を占めたい米国の戦略かもしれない。
- しかし、外交安保分野の韓米対立が経済報復につながっているとの見方もある。トランプ大統領は1月11日、WSJ(ウォールストリート・ジャーナル)とのインタビューで「北朝鮮があなたと文在寅大統領との間を仲たがいさせようとしているのではないか」という質問に「我々はいわば貿易という手段を持っている。これはかなり強い交渉チップ(chip)だ」と、韓国への経済圧力を示唆している。
韓国への「お仕置き」
トランプ大統領は英語では何と言ったのですか?
鈴置:以下です。「Transcript of Donald Trump Interview With The Wall Street Journal」で読めます。
- we also have a thing called trade. And South Korea—brilliantly makes—we have a trade deficit with South Korea of $31 billion a year. That’s a pretty strong bargaining chip to me.
韓国人は被害者意識が強く、自分だけがいじめられていると思い込む傾向にあります。でも、このトランプ発言からすると、北朝鮮になびく韓国を米国が通商カードで脅すという見方を邪推と決めつけられません。
韓国経済新聞は「韓国へのお仕置き」という表現を使いました。社説「通商圧力を通じ米国は韓国への『お仕置き』に本腰」(2月19日、韓国語版)から翻訳します。
- 北朝鮮への制裁などを巡り、文在寅政権と微妙な葛藤を繰り広げてきた米国が、通商を通じ『韓国に対するお仕置き』を始めたとの分析も出ている。
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