政権交代シナリオに重み

米国人も、ですか?

鈴置:米国人も同じです。東亜日報のイ・スンホン・ワシントン特派員は「米メディア『本当に狂っている』『金正恩は何をするか分からない』」(2月16日、韓国語版)で、以下のように書きました。

  • 「これは本当に狂った(insane)話です」。「金正恩は今後、何をしでかすか分かりません」。CNN、FOXニュースは2月14日(現地時間)、金正男殺害事件を報じた際、こう評した。
  • 米国でも金正恩の暴走がどこまで続くか、予測不能との空気が強まっている。米本土を狙ったICBMの試験が迫っているとの憂慮も深まった。
  • ワシントンの外交界と主なシンクタンクにも、この事件によりトランプ政権がいっそう強硬策に出るとの見方が多い。
  • CNAS(新アメリカ安全保障センター)のパトリック・クローニン(Patrick Cronin)上級顧問は「戦争状態でもないのに真昼間に暗殺を敢行する北朝鮮が、国際社会の正常な一員となることはほぼなくなった」としたうえで「先制攻撃、政権交代シナリオがこれまで以上に重みを持って議論されることになろう」と語った。

難民を恐れる中国

話を聞いていると、米国による北朝鮮への攻撃が今にも始まる気がしてきました。

鈴置:専門家は軍事的にはいつでも可能だし、早ければ早い方がいいと判断しています。ただ、政治的な問題が残っています。

 北爆によって北朝鮮の核を除去し金正恩政権を倒した後、朝鮮半島の勢力圏をどう確定するか――までは米中間で合意ができていないように思われます。

そもそも「北爆」を中国は嫌がりませんか?

鈴置:それにより、大量の難民が中国になだれ込むことは大いに警戒していると思います。一方、米国にしても、北朝鮮の「液状化」に伴う朝鮮半島の混乱に巻き込まれたくはないでしょう。

 そこで米中が「北爆後の液状化」を避けるため、何らかの協力体制を模索する可能性が高いと思います。北朝鮮を国連、実質的には米中が共同管理するアイデアもあるのです。

 21世紀に入ったころから米国は中国に対し「事後処理を話し合おう」と何度も呼び掛けたようです。しかし、中国側が応じなかったとされます。

 ただ、状況が切羽詰まって米国が「北爆」のハラを固めれば、中国も協議に応じるしかありません。もう、応じているかもしれません。

激変する朝鮮半島の構図

そこで米中の取引が始まるのですね。

鈴置:米国との交渉の過程で、中国は自らの脅威となっている在韓米軍の撤収、あるいは米韓同盟の廃棄を求めると思います。「事後処理での協力」との交換条件に持ち出せば、米国も飲むかもしれません。

 米国にとっても在韓米軍は財政的な重荷になっています。朝鮮半島北部から「何をするか分からない政権」が消えれば米軍、ことに地上軍を韓国に置いておく必要性は減ります。

 もちろん、米中の談合が成立する前に時間切れとなり「北爆」が始まる可能性もあります。いずれにせよ、今後予想される「半島の激変」に日本は身構えるべきです。

次回に続く)

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孤立する韓国、「核武装」に走る

■「朝鮮半島の2つの核」に備えよ

北朝鮮の強引な核開発に危機感を募らせる韓国。
米国が求め続けた「THAAD配備」をようやく受け入れたが、中国の強硬な反対が続く中、実現に至るか予断を許さない。

もはや「二股外交」の失敗が明らかとなった韓国は米中の狭間で孤立感を深める。
「北の核」が現実化する中、目論むのは「自前の核」だ。

目前の朝鮮半島に「2つの核」が生じようとする今、日本にはその覚悟と具体的な対応が求められている。

◆本書オリジナル「朝鮮半島を巡る各国の動き」年表を収録

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』『「中国の尻馬」にしがみつく韓国』『米中抗争の「捨て駒」にされる韓国』 に続く待望のシリーズ第9弾。10月25日発行。