THAADを信じるのか

韓国も舐められたものですね。

鈴置:中国共産党の本音を報じる環球時報の英文版、Global Timesの社説はもっと露骨でした。「Discussion of THAAD deployment is shortsighted move of Seoul and Washington」(2月7日)は威嚇そのものです。要点は以下です。

  • もし、THAADが韓国に配備されるなら、戦略と戦術の両面で中国の軍事的な調査目標に公式に選ばれるだろう。
  • 韓国や米国の言うままに、THAADの目的が北朝鮮抑止だけにあると我々は信じたりはしない。我々は韓国の戦略を現実的な視点から観察せねばならない。

 「戦略的な軍事目標に選ぶ」とは核攻撃の対象にする、との意味です。中国は核で脅し始めたのです。続いてGlobal TimesはTHAADの弱点も突きました。

  • ミサイル防衛システムは大国間の戦争で実際に使われたことはない。それゆえに効果は理論上のものに留まる。THAADの韓国配備は軍事的というよりも、政治的に重要だと見る専門家もいる。

 THAADは敵のミサイルをすべて撃ち落とせるとは限りません。敵が一度に大量のミサイルで攻撃してくれば、防ぎきれなくなるからです。

 Global Timesは韓国に対し「そんなあやふやなものを信じ、米国にすがりつくのか」と嘲笑ったのです。そして最後に、韓国を脅し「二股外交はもう、無理だぞ」「米国にいい顔をするということは、中国の顔に泥を塗ることだ」と諭したのです。

  • 朝鮮半島の緊張が高まり、ついには対決に及ぶかもしれない。こうなった際、いかなる国の利益も害さない全方位外交などというものはあり得ない。であるから関係国は中国の立場に挑戦する決定を下す前に、慎重に考えるべきである。

スワップを打ち切るぞ

韓国はどうするのでしょう?

鈴置:展開が読めません。もう、自分の意思では動けなくなっているのです。今の時点は米国に従っています。でも、中国に本格的に凄まれたら、後戻りするかもしれません。

中国が軍事的な脅しをかける、ということですか。

鈴置:それもあります。もっと手っ取り早い手もあるのです。経済面で脅せばいいのです。今、人民元安と原油安の2つから世界は前例のない不況に直面する、との懸念が高まっています。一部の国では金融危機が起きるかもしれません。

 中国からの資本逃避が起きて人民元が暴落すれば、真っ先に韓国が連座すると韓国紙は警戒しています。貿易でも金融でも、韓国は中国にオールインしているからです。

 というのに通貨の同盟は中国と結んだまま。米国側に戻ってはいないのです。資本逃避に見舞われた際、命綱となるのが通貨スワップです。でも韓国は日本や欧米とは結ばず、何と70%が中国頼りです(「韓国の通貨スワップ」参照)。

韓国の通貨スワップ(2016年2月11日現在)
相手国 規模 締結・延長日 満期日
中国 3600億元/64兆ウォン(約560億ドル) 2014年
10月11日
2017年
10月10日
UAE 200億ディルハム/5.8兆ウォン(約54億ドル) 2013年
10月13日
2016年
10月12日
マレーシア 150億リンギット/5兆ウォン(約47億ドル) 2013年
10月20日
2016年
10月19日
豪州 50億豪ドル/5兆ウォン(約45億ドル) 2014年
2月23日
2017年
2月22日
インドネシア 115兆ルピア/10.7兆ウォン(約100億ドル) 2014年
3月6日
2017年
3月5日
CMI<注> 384億ドル 2014年
7月17日
<注>CMI(チェンマイ・イニシアティブ)は多国間スワップ。IMF融資とリンクしない場合は30%まで。
資料:ソウル新聞「韓国の経済体力は十分」(2015年2月17日)

 もし中国が「THAAD配備を認めれば、通貨スワップを破棄するぞ」と言い出したら、韓国は手も足も出ないのです。

 旧正月の連休明けの2月11日、KOSPI(韓国総合株価指数)は前営業日比2.93%安い1861.54で引けました。この日もそうでしたが、2015年12月初め以降ほぼ連日、外国人が売って機関投資家が買い支えるという展開が続いています。

次回に続く)

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「中国の尻馬」にしがみつく韓国

2015年9月3日、朴槿恵大統領は中国・天安門の壇上にいた。米国の反対を振り切り、抗日戦勝70周年記念式典に出席した。

10月16日、オバマ大統領は、南シナ海の軍事基地化を進める中国をともに非難するよう朴大統領に求め、南シナ海に駆逐艦を送った。が、韓国は対中批判を避け、洞ヶ峠を決め込んだ。韓国は中国の「尻馬」にしがみつき、生きることを決意したのだ。

そんな中で浮上した「核武装」論。北朝鮮の核保有に備えつつ、米国の傘に頼れなくなる現実が、彼らを追い立てる。

静かに軋み始めた朝鮮半島を眼前に、日本はどうすべきか。目まぐるしい世界の構造変化を見据え、針路を定める時を迎えた。

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』に続く待望のシリーズ第7弾。12月15日発行。