中国のイジメに戦々恐々

平和ボケは日本人だけではないのですね。

鈴置:もちろん、そんな「平和ボケ」を批判する識者もいるのですが、左傾化した韓国社会で彼らは「戦争好き」などと見なされがちです。

 それに「中国の命令には逆らえない」のが韓国の空気です。千年以上も中華帝国の一部だった後遺症です。ここが日本人には分かりづらい。米国人も「なぜ韓国人はこれほどに中国の言いなりになるのか」と首を傾げます。

結局、THAAD配備の容認を期に、韓国は米国側に戻るのですか?

鈴置:それはまだ、判断できません。「米中星取表」の「在韓米軍へのTHAAD配備」の項目は、正式な協議が始まったことを考え、米国の「▼」を「△」と変えました。

 ただ「○」にはしませんでした。中国の横やりにより、韓国が配備に「NO」と言い出す可能性が若干ですが残っているからです。

 「THAAD」以外の対立案件は、いまだ中国優勢です。朴槿恵政権が「離米従中」外交をやめると結論を下すのは早計だと思います。

「私は悪くないからね」

 韓国は今、中国からどんなイジメに遭うか、戦々恐々としています。象徴的だったのが「THAAD配備を公式に協議する」と発表した2月7日の国防部の会見です。

 聯合ニュースの「韓米、在韓米軍THAAD配備を公式協議……北の核・ミサイルに対応」(2月7日、韓国語版)の記事に添付された動画によると、柳済昇(リュ・ジェスン)国防部政策室長の発言には以下のくだりがあります。

  • 協議開始の決定は、韓米連合司令部司令官兼在韓米軍司令官であるカーチス・スカパロッティ(Cartis Scaparrotti)大将の建議により行われた。
  • 今後、THAADが配備されても、それは北朝鮮に向けてだけ運用される。

 中国への言い訳です。「配備は米国から言われてやったこと。韓国から言い出したのではないからね」「中国向けには運用しないよう、米国には私から念を押しましたからね」と、韓国は叫んだのです。

北朝鮮にだけ向けて運用するなんてことができるのでしょうか。

鈴置:韓国国防部は「Xバンドレーダーの探知距離を短くして運用する」とレクチャーしています。ただ、ある日本の専門家は「米軍が兵器の性能をわざわざ落として使うことは考えられない」と語っています。

北より南の大使に厳しい中国

配備容認に中国はどう出ましたか?

鈴置:激怒しました。公式には7日、外交部が駐中韓国大使を呼び「THAAD配備のための公式の議論を始めたことに抗議し、中国の厳正な立場を表明」しました。

 なお、中国外交部は同じ2月7日に北朝鮮の駐中大使も呼んでミサイル実験に対し抗議したのですが「厳正な立場」ではなく「原則的な立場」の表明に留めました。

 中央日報は「中国、南北大使それぞれ呼んで抗議…南には『厳正な立場』、北には『原則』表明」(2月8日、韓国語版)で、国連安全保障理事会の決議に違反した北朝鮮よりも、自衛の武器導入を図る韓国に対し、中国がより厳しい姿勢をとったと指摘しました。

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