オバマから叱られた

日韓の「慰安婦合意」といい、米国がこのところ対韓圧力を強めていますね。

鈴置:韓国の裏切りが目に余るようになったからです。「米中星取表」で明らかなように、米中対立案件で韓国はほぼ、中国の言うことを聞くようになりました。そして2015年9月、中国が開いた抗日戦勝70周年記念式典に朴槿恵大統領が参加したのが画期となりました。

米中星取表~「米中対立案件」で韓国はどちらの要求をのんだか
(○は要求をのませた国、―はまだ勝負がつかない案件、△は現時点での優勢を示す。2016年2月11日現在)
案件 米国 中国 状況
日本の集団的自衛権
の行使容認
2014年7月の会談で朴大統領は習近平主席と「各国が憂慮」で意見が一致
米国主導の
MDへの参加
中国の威嚇に屈し参加せず。代わりに「韓国型MD」を採用へ
在韓米軍への
THAAD配備
韓国は米国からの要請を拒否していたが、2016年2月7日に「協議を開始」と受け入れた
日韓軍事情報保護協定 中国の圧力で署名直前に拒否。米も入り「北朝鮮の核・ミサイル」に限定したうえ覚書に格下げ
米韓合同軍事演習
の中断
中国が公式の場で中断を要求したが、予定通り実施
CICAへの
正式参加(注1)
正式会員として上海会議に参加。朴大統領は習主席に「成功をお祝い」
CICAでの
反米宣言支持
2014年の上海会議では賛同せず。米国の圧力の結果か
AIIBへの
加盟 (注2)
米国の反対で2014年7月の中韓首脳会談では表明を見送ったものの、英国などの参加を見て2015年3月に正式に参加表明
FTAAP (注3) 2014年のAPECで朴大統領「積極的に支持」
中国の
南シナ海埋め立て
米国の対中批判要請を韓国は無視
抗日戦勝
70周年記念式典
米国の反対にも関わらず韓国は参加
(注1)中国はCICA(アジア信頼醸成措置会議)を、米国をアジアから締め出す組織として活用。
(注2)中国はAIIB(アジアインフラ投資銀行)設立をテコに、米国主導の戦後の国際金融体制に揺さぶりをかける。
(注3)米国が主導するTPP(環太平洋経済連携協定)を牽制するため、中国が掲げる。

 この式典は中国の軍事力を見せつけるのが狙いでした。メーンイベントである軍事パレードでは、米国を射程に収めるミサイルも行進しました。

 参観した首脳は権威主義的国家のトップが多く、米国の同盟国からは朴槿恵大統領ぐらいだったのです(「韓国は『帰らざる橋』を渡る」参照)。

 天安門の壇上で習近平主席、プーチン大統領らに囲まれた朴槿恵大統領の写真は世界に配信されました。この実に分かりやすいメッセージにより、韓国の「離米従中」は米国の外交関係者の共通認識となりました(「ルビコン河で溺れ、中国側に流れ着いた韓国」参照)。

 10月に訪米した朴槿恵大統領は記者団の前でオバマ大統領から、中国の言いなりになるな、と叱られました(「蟻地獄の中でもがく韓国」参照)。

朴槿恵の世界観が崩壊

 12月末の「慰安婦合意」でも、朴槿恵大統領は妥協の絶対条件に掲げていた「国民が納得する日本の謝罪」を勝ち取れませんでした。

 「慰安婦を言い訳にして米日韓の3国軍事協力から逃げるな」との米国の圧力に屈したのです(「掌返しで『朴槿恵の親中』を批判する韓国紙」参照)。

 「合意」には「問題の最終的かつ不可逆的な解決を確認」との文言が盛り込まれました。韓国は「慰安婦カード」を捨てさせられたのです。これも米国の差し金だったと言われています。

 米軍関係者の最近の言説から判断して、THAADの問題でも米政府高官は韓国高官に「中国の言うことばかり聞くのなら、在韓米軍を撤収する」くらいは言ったと思います。

 そんな米国の「最後通牒」に直面した朴槿恵政権は、折れざるをえなかったと思われます。米中を競わせて操ろうとした韓国ですが、米韓同盟廃棄につながる在韓米軍撤収に踏み切る覚悟はありません。

 韓国が頼りにしていた「中国の台頭」にも疑問が付くようになりました。中国発の世界恐慌が懸念されるほどになったのです。「米国は沈む太陽、中国は昇る太陽」との、朴槿恵外交の前提となった世界観が崩壊してしまったのです。

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