地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD) 写真=U.S. Department of Defense, Missile Defense Agency/ロイター/アフロ

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 韓国が地上配備型ミサイル迎撃システム(THAAD)の配備受け入れに動く。「中国の言いなりになるな」と米国に怒られたからだ。だが今度は、面子を失った中国から苛められることになる。

習近平が直接に命令

韓国が米軍のTHAAD配備を認めるようですが。

鈴置:韓国国防部は2月7日、在韓米軍基地へのTHAAD配備に関し「米国との公式協議に入る」と発表しました。

 今後、北朝鮮の核問題で解決に向けてよほどの進展がない限り、配備を容認すると思われます。中国から極度の脅迫を受けたら、韓国は受け入れを中止するでしょうけれど。

 北朝鮮の核・ミサイル開発が進むに連れ、米国はグアムなどにTHAADを置いて迎撃体制を整えてきました。当然、有事となれば真っ先に攻撃を受ける在韓米軍基地にも配備する方針を打ち出しました。

 すると中国は韓国に対し「配備を絶対に認めるな」と圧力をかけました。2014年7月の中韓首脳会談では、習近平主席が「主権国家なら反対すべきだ」と朴槿恵(パク・クンヘ)大統領に直接、要求したようです。

 中央日報が「習近平『大韓民国は主権国家……朴槿恵大統領にTHAAD拒否要請』」(2015年2月6日、日本語版)で、韓国国防関係者の話として報じています。

板挟みで「おとぼけ作戦」

米中間で板挟みになったわけですね。

鈴置:韓国は「THAAD配備について米国から打診は一切ない」と言い張って、誤魔化そうとしました。

 2015年3月には青瓦台(大統領府)が「3NO」という言葉まで作りました。「米国から配備の要請もなく、従って協議したこともなく、だから何も決めていない」――と言うのです。しかし、ついに「3NO」という、苦肉のおとぼけ作戦も持たなくなったのです。

突然の配備容認は、北朝鮮が核と長距離弾道ミサイルの実験をたて続けに実施したからですか?

鈴置:ええ、1月6日の4回目の核実験と、2月7日の長距離弾道ミサイル実験が引き金です。厳密に言うと「ここに至っても拒否するのか」と怒る米国に対し、抵抗できなくなったのです。

 在韓米軍が韓国を守っているのです。韓国の国民に加え、その基地を防御するためのTHAADを、守られている韓国政府が拒否する――。同盟国とは思えないやり口です。

 これ以上拒むのなら、米韓同盟には取り返しのつかない亀裂が入るところでした。米国の安全保障関係者からは「韓国との同盟はいつまで持つか分からない」との声さえ上がっていたのです。