ソウルに「核武装」の垂れ幕

国民はフラストレーションがたまるでしょうね。

鈴置:核武装論がさらに盛り上がると思います。4回目の核実験の直後、保守系紙は「核武装を検討せよ」と書き始めました(「やはり、韓国は核武装を言い出した」参照)。

 その後も、米中など国際社会が早急な対北制裁に乗り出さないので、韓国の核武装論者の声はボルテージが上がる一方です。

 「日本と一緒に核武装に動けば米中も本気になって北を叱ってくれるだろう」との意見も出ています(「そうだ、日本と一緒に核武装しよう」参照)。

 さらには保守の大物政治家も、核武装を呼び掛けるに至りました(「FIFA元副会長も訴えた『韓国の核武装』」参照)。

 ソウルの繁華街には「核武装」を訴える垂れ幕が掲げられ始めたようです。保守サイト、趙甲済(チョ・カプチェ)ドットコムに金泌材(キム・ピルジェ)記者が書いています。

 「愛国党、ソウルのあちこちで『NPT脱退、自ら核武装』の垂れ幕掲げる」」(2月3日、韓国語)という記事で、写真付きです。

国論は分裂へ

韓国の世論は核武装論一色になるのでしょうか。

鈴置:左派は核武装論に乗りそうにありません。反対に、北朝鮮との対話で解決しようという人が目立ちます。先ほど説明した「米韓合同軍事演習と核実験凍結の取引」に応じよう、といった意見です。

 驚くべきことに、保守の中からも「米中が談合して北の核を認めそうだ。この状況を根本から変えるために、在韓米軍撤収と北の核廃棄を取引する手もある」との意見が飛び出しました(「『在韓米軍撤収』を保守も主張し始めた」参照)。

 韓国の核武装は実現性が低いから、何とか他の手段も考えよう、ということでしょう。

「韓国の世論は割れる」のですか?

鈴置:そちらの方向に向かっています。

米国は?

鈴置:打つ手がないでしょう。韓国同様に、軍事力を使うつもりはないからです。4回目の核実験後から、中国と対北制裁を話し合ってきましたが、合意に至っていません。今後も、制裁強化に向け中国の説得に動くでしょうが「北の核」廃棄は難しい。

 今すぐではありませんが、韓国の左派や一部保守までが言い始めた「北朝鮮との取引」に応じる可能性もあると見る人が増えています。ベストの解決策ではありません。が、軍事力を使わないとの前提下では、これがベターに見えるからです。

「米韓同盟」消滅を待つ中国

では、米韓同盟は緩んでいくということですね。

鈴置:そういうことです。中国にとっては願ってもない状況です。中国が「北の核」の解決に熱心でないのは、北という緩衝地帯を失いたくないからだ、というのが定説です。

 もちろんそれは正しいのですが「北の核」の存在により、米韓同盟を消滅させられると見ていることもあるでしょう。

 今回の北の長距離弾道ミサイルの実験は、単に「ミサイルの射程が伸びたかどうか」といった話ではないのです。東アジアの安全保障の構造を大きく変える事件なのです。

次回に続く)

■変更履歴
1ページ目、北朝鮮の発表情報を追加し、更新しました。 [2016/02/07 14:10]
1ページ目、韓国の報道情報を追加し、更新しました。 [2016/02/07 14:50]
大好評シリーズ第7弾! 「核武装」で軋む朝鮮半島を見通す
Amazon【韓国・北朝鮮の地理・地域研究】ランキング1位獲得!
「中国の尻馬」にしがみつく韓国

2015年9月3日、朴槿恵大統領は中国・天安門の壇上にいた。米国の反対を振り切り、抗日戦勝70周年記念式典に出席した。

10月16日、オバマ大統領は、南シナ海の軍事基地化を進める中国をともに非難するよう朴大統領に求め、南シナ海に駆逐艦を送った。が、韓国は対中批判を避け、洞ヶ峠を決め込んだ。韓国は中国の「尻馬」にしがみつき、生きることを決意したのだ。

そんな中で浮上した「核武装」論。北朝鮮の核保有に備えつつ、米国の傘に頼れなくなる現実が、彼らを追い立てる。

静かに軋み始めた朝鮮半島を眼前に、日本はどうすべきか。目まぐるしい世界の構造変化を見据え、針路を定める時を迎えた。

中国に立ち向かう日本、つき従う韓国』『中国という蟻地獄に落ちた韓国』『「踏み絵」迫る米国 「逆切れ」する韓国』『日本と韓国は「米中代理戦争」を闘う』 『「三面楚歌」にようやく気づいた韓国』『「独り相撲」で転げ落ちた韓国』に続く待望のシリーズ第7弾。12月15日発行。