奥の手は南北首脳会談

でも、米国は「もう演習は延期しない」と言っています。

鈴置:南北には首脳会談を開くという奥の手があります(日経・電子版「北朝鮮、次の『時間稼ぎ』は南北首脳会談」参照)。

 平昌五輪で平和ムードを盛り上げたうえ、パラリンピック閉幕(3月18日)の後に韓国と北朝鮮が首脳会談を開く、と発表するのです。1月26日の講演で、趙明均長官はそれを示唆する発言もしています。

  • (五輪・パラリンピックが終わった後の)4月にも(南北関係が)続く動力を確保し、6月以降も引き続く状況をいかに醸成するかが我々に与えられた課題だ。

 「南北関係が続く」最大の原動力は首脳会談です。南北の間で何らかの合意を成すには、これ以上の対話はありません。

 世界の多くの国も南北首脳会談の開催を歓迎するでしょう。北朝鮮の核武装とさほど関係ない国は、偽装の平和であっても目前の軍事衝突が避けられればいいのです。

 それに専門家でない限り、普通の人は文在寅政権が親北派に動かされていることを知りません。普通の人は、対立していた南北が話し合うのだからいいことに決まっている、と思います。

 

 そんな中「米韓合同軍事演習を予定通りに実施する」と米国が言い続けられるでしょうか。米国の中からも北朝鮮の核問題に関し「南北首脳会談の進展を見守ろう」といった声が出るのは間違いありません。

子供だましの時間稼ぎ

普通の米国人はともかく、事情を知る指導層までも「核問題の解決は南北に任せよう」と考えるでしょうか。

鈴置:韓国は米朝対話をエサに南北首脳会談を飲ませる作戦です。米国に「南北首脳会談は米朝対話を実現するためのものだ。文在寅大統領が金正恩委員長に会ったら、米国と話し合う機会を持つよう説得する。米国は北と直接話し合っては核を放棄させればよい」と持ちかけている模様です。

 1月27日にハワイで開かれた米韓国防相会談の冒頭、宋永武(ソン・ヨンム)国防長官が「南北対話は究極的に北朝鮮を米国との(非核化)対話に導くためのものという文在寅大統領の発言に関し(マティス国防長官と)意見を交換する」と語っています。

 中央日報の「マティス国防長官『南北間の五輪対話は核問題解決できない』」(1月29日、日本語版)などが報じました。

 なお、この記事の見出しから分かるように席上、マティス国防長官は「五輪対話では核問題は解決できない」と改めて韓国にクギを刺しています。

米朝対話が実現したとして、北朝鮮は核を放棄するのでしょうか。

鈴置:その可能性は極めて低い。どんなに早急に米朝会談を開くとしても数カ月先。そのころ、北は米国まで届くICBMを完成しています。

米国から少々脅されても「ワシントンが消滅してもいいのか」と脅し返せるようになるからです。そんな子供だましの時間稼ぎ作戦に米国が乗るとは思えません。

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