習近平の顔に泥を塗った朴槿恵

中国も怒っているのですね。

鈴置:朴槿恵(パク・クンヘ)政権が中国を都合よく利用したからです。就任当初から採用したのが中国の威を借りて日本と北朝鮮を叩き、その姿を国民に見せて喝采を浴びる――というやり口でした。

 安倍晋三首相と会うよう米国から求められても、朴槿恵大統領は応じませんでした。韓国の国民は「日本を無視した」と喝采を叫びました。

 日本との首脳会談拒否は、韓国が中国と共闘体制を組んだからこそ踏み切れたのです。もし中国が日本と首脳会談をどんどん開く状況にあれば、韓国は孤立します。「慰安婦」に関しても中国は対日スクラムを組んでくれました。

中韓の「慰安婦共闘」
2014年7月3日
中韓首脳会談で「慰安婦の共同研究」に合意。共同声明の付属文書に盛り込む(聯合ニュース・韓国語版
2014年12月15日
韓国政府系の東北アジア歴史財団と、中国吉林省の機関、档案局(記録保管所)が慰安婦問題関連資料共同研究のための了解覚書(MOU)を締結(聯合ニュース・日本語版
2015年8月15日
中国国家公文書局が『「慰安婦」--日本軍の性奴隷』第1回文献テレフィルムを公式サイトで公表(人民網日本語版
2015年9月22日
サンフランシスコ市議会が「慰安婦碑または像の設置を支持する決議案」を全会一致で採択。運動の中心となったのは中国系団体(産経新聞)
2015年10月12日
中国外交部の華春瑩副報道局長、旧日本軍の慰安婦に関する資料について「ユネスコ世界記憶遺産への登録申請を他の被害国と共同で進める方針」(聯合ニュース・日本語版
2015年10月13日
韓国外交部の魯光鎰報道官、慰安婦資料のユネスコ世界記憶遺産に中韓が共同で登録申請することに関し「推進中の民間団体が判断すべきだ」。推進中の民間団体とは女性家族部傘下の財団法人、韓国女性人権振興院(聯合ニュース・日本語版
2015年10月28日
「中韓の慰安婦像2体」をソウル城北区に設置、除幕式。中韓の彫刻家が製作し、両国市民団体が支援(産経新聞

 2015年9月の北京での軍事パレードでも、朴槿恵大統領は中国から大きなプレゼントを貰いました。西側の首脳は一切参加しなかったのですが、天安門楼上での雛段序列は習近平主席、プーチン大統領に次ぐ3位。これまた国民は大喜びしました。

 中国へのお返しが「THAAD」でした。米国が「配備したい」と言ってきても言を左右にして先送りし続けた。これにより中国の歓心を買ったのです。

 しかし、北朝鮮が2016年1月に4回目の核実験を実施すると、米国はついに堪忍袋の緒を切りました。「THAAD配備を拒否するのなら在韓米軍を引き上げる」と韓国に通告した模様です。

 米国の強い怒りに驚いた韓国は同年7月、THAAD配備に合意しました。習近平主席が直接、朴大統領に配備拒否を要請した経緯も知れ渡っていましたから、中国の面子は丸つぶれとなりました。

堂々と「合意は無視する」

韓国は「食い逃げの達人」ですね。

鈴置:日本も何度も煮え湯を飲まされました。表「『慰安婦の10億円拠出合意』直後の動き」をご覧下さい。

●「慰安婦の10億円拠出合意」直後の動き(2016年)
8月12日日韓両外相、慰安婦合意に基づく10億円拠出で合意
8月15日韓国与野党の国会議員団10人、竹島に上陸
8月19日ソウル中央地裁、元徴用工裁判で新日鉄住金に1億ウォンの支払いを命令
8月25日ソウル中央地裁、元徴用工裁判で三菱重工業に14人の遺族に1人当たり9000万ウォンの支払いを命令
8月27日日韓財務対話で、通貨スワップ再開に向けた協議開始で合意
9月6日外交部の林聖男・第1次官、国会で「政府も国民世論を把握しながら動くため、今の段階では政府が前に出てこの問題を推進する考えはない」と答弁

 2016年8月、日本大使館前の慰安婦像を韓国政府が撤去しないのに、日本政府は10億円の拠出を決めました。その瞬間、韓国は手のひらを返して「卑日」を再開しました。

 というのに日本はスワップ交渉に入ることまで約束した。当然、韓国は「慰安婦合意を破っても報復されない」と信じるようになりました。

 9月6日には日本大使館前の慰安婦像の撤去に関し、外交部の第1次官が「政府が前に出て推進する考えはない」と国会で答弁しました。堂々と「合意は無視する」と宣言したのです。

 釜山総領事館前の慰安婦像設置もこの流れの中にあります。「日本は押せば引く」と信じる韓国外交部は「許認可権限は自治体にある」と言い張って、これを放置したのです。